僕たちの日常・忍跡編

──written by 紫月sama@Cheshire Cat





「景吾〜おはようさん!」

朝から朗らかに声をかける忍足だが、その返事は捗々しくない。跡部景吾は朝が苦手なのだ。どうやら低血圧らしく、それでも部活の朝練が始まればシャキッとするのだが、それまではいつも機嫌が悪そうでぼんやりしている。

「ん〜〜〜今日も寝起き悪いんやな」
「…………いきなり治るかよ」
「でもな。やっぱ愛しい恋人には、朝から機嫌ようしてて欲しいなあ」
「知るか。バーカ」

それでも今日はしっかり返事を返しているあたり、それほどでもないのだろう。肩に掛けたテニスバッグを重そうにズリあげながら、黙って学校への道を歩いている。ふたりが付き合いだしてから、登校も下校も一緒にするようになっていた。それで初めて忍足は、跡部が朝に弱いことを知ったのである。起床はそれでもお手伝いさんたちが総出で頑張るので、部長自ら朝練に遅刻ということは幸いなかったが。

「あ。そうや!」
「……?」

不意に忍足は何かを思いついた顔で、ポンッと手を打った。それに対する跡部の反応は鈍い。ボーっとしている彼の手首を掴んで、こっちこっちと通学路を外れて誘導していく。

「どこ行くつもりだ、忍足」
「大丈夫やって、遅刻はせえへんから。景吾の目をパッチリ覚まさせたるええ方法思いついたんや」

自信ありげに頷いた忍足は、そのまま近くの公園へと入り込んだ。
朝のこの時間、ジョギングやウォーキングをしている人、あるいは犬の散歩をしている人がちらほらいる程度で。忍足はあたりを見回すと、人気の少なそうな方へと跡部を連れて行く。

「忍足?」
「すぐ済むからな〜」
「え…あっ……んっ」

大きな桜の樹の傍まで来たところで突然唇を塞がれた。驚いた跡部の肩から滑り落ちたテニスバッグが地面に到着するのに、それほど時間は掛からなかった。いきなりのことに、慌てて跡部が忍足を押しのけようとする。けれど樹の幹に身体を押し付けられて、身動きがママならない。ばたつかせた腕は掴まれて、蹂躙の為に忍び込んでくる忍足の舌に翻弄される。

「…っ…はっ…」

息継ぎも許されないほど激しく。時折離れたかと思うと、休む間もなく違う角度で落ちてくる唇。いつのまにか跡部は忍足の背にしがみ付いて、自分から舌を絡ませていた。爽やかな朝には不似合いな小さな水音と、甘やかな喘ぎ。気がつくとキスは終わって、至近距離で忍足が優しい眼差しで見つめていた。

「…にすんだよ!忍足!」
「目え覚めたやろ?」
「……!!!!!」

跡部は無言で忍足の頬をパンッと張った。けれど力の抜けきった身体から繰り出されたのは、たいした威力もなくて。忍足はにこにこ笑ったまま、跡部のテニスバッグを拾い上げた。

「ん〜効果はばっちりやったな。これから毎日こうしような。……まあ、潤んだ眼の景吾が、ちょっと俺には刺激的ゆう問題はあるけど」
「忍足!!!!」

顔を真っ赤にした跡部の抗議もなんのその。忍足は機嫌よく跡部の手を握る。

「ほら、部長が遅刻するわけには行かんやろ」
「…忍足!!覚えてやがれっ!」
「楽しみにしとるで〜」

語尾に♪マークでもつきそうな口調に、跡部はため息をついた。同時に決心する。毎朝これをやられては堪らないから、どうにかして低血圧を克服してやろうと。そんな跡部の思惑も知らず、忍足は学校へ向かって歩き始めた。

ある朝の、ふたりの光景。


<END>




毎度お馴染み 紫月さん@【Cheshire Cat】ちの10万HIT記念フリーSSs(複数形)です〜v
──つーかUP遅(^^;)。すみません毎度……(^^;)。そして贈りモノできずにすみませ……(^^;)。

さて。
忍跡です!
忍足サイテイ!(笑) ていうかそれでこそ忍足侑士!(え)
きっとあれですね、ガッコ行って超上機嫌(珍しく)な忍足にガックンが「ゆーし〜? どしたの?」とか聞いて、二枚目形無しの笑み崩れた顔で忍足答えるんでしょうね〜。んで、「はぁ〜っ? おっまえ、朝っぱらから何やってんの!? ゆーしヘンタイ! サイテイ!」とか罵倒されまくり(笑)。──好きかも、そういうの(爆)。
忍岳好きですが、忍足×他の人(ってケイゴじゃなかったら誰?)でサイテイ男な侑士と悪友(?)がっくんって構図も好きですねv
それにしても、そうか、景吾サマって、……こんなにかわいいのに、なんでウチのあの人ああなんだろう…………(遠い目)。

紫月さん、どうもありがとデス! 今年もがんばってください!

(2003.1.27 UP)





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