僕たちの日常・パパ桃編 ──written by 紫月sama@Cheshire Cat |
「お、来たか武。ま、そのあたりに座れよ」 部活を終えた桃城がジャージから制服に着替えている最中に携帯が鳴り、誰からかと思えば南次郎からで。ひとこと「すぐ来い」とだけ言って切れたのに、呆れながらここまでやってきたのだ。いいオトナなのに、いつも横柄で勝手で。でもそれにいつもつられてしまう自分も自分だと、桃城は苦笑した。 越前家の隣にある寺の、さすがに本堂ではなく庫裏で。南次郎は炬燵に両足を突っ込んでいた。机の上には、湯気を立てる鍋がひとつ。どうやらふたりで鍋を突こうということらしかった。ただでさえ育ち盛りの上に、ハードな部活動をこなしてきた後の桃城は、その湯気を見た途端盛大に腹をぐーっと鳴らせた。 「ほら、早く来いよ。いい感じに煮えてんぜ」 「おう!」 桃城は荷物をそのあたりに置き、汚さないように学ランの上を脱ぐと、南次郎の向かいに座って足を炬燵に突っ込んだ。 「おい。正面じゃなく横に座れよ」 「えー?」 通常ふたりの場合は、差し向かいだろうに、と思いながらも桃城は立ち上がり、するりと南次郎の右横に座りなおした。南次郎は、満足そうに頷く。 「おし。素直でいい子じゃねえか。……俺と寝るときもそんぐらい素直にしてろよ」 「なっ…!うっせえ、おやじ!!」 桃城は顔を真っ赤にして怒鳴った。別に素直になれないわけじゃない。ただいつも意地悪く問われるから、そしてまだまだどうしても恥ずかしいから。それなのに、こんな風に抜けぬけと言われると腹が立つ。 「そのおやじが好きなのは、どこのどいつだ?」 「うっ……」 ここで嫌いだと言えないのが悔しかった。結局こんな性格も含めて、この自分の倍以上の年の妻子持ちのおやじが好きなのだから、仕方がない。桃城は押し黙って、鍋から上る湯気を見つめる。 「おおっと、ここらへんもう火が通ったな。ほら、武」 そう言いながら南次郎は、鍋の中央付近の肉を箸で掬って取り皿に入れる。タレを絡めて、二度三度息を吹きかけて冷まし、桃城の口元へと持っていく。一瞬驚いた桃城だが、素直に口を開けて待つ。 だが。 「ほれ、アーン………なんて、やるわけないだろ。これは俺の」 「ええ!?」 桃城の口元からUターンした肉は、南次郎の口の中へと消えていく。桃城は思わず、箸をギリッと握り締めてしまう。 「…おっさん!…サイテーだな、サイテーだよっ!」 「悔しかったら食って見ろ。ほれほれ、ここのも頂き!」 「あー、肉なくなっちまうじゃねーか!俺、育ち盛りなんだぞ!?」 「若者は野菜を食え。俺様は肉食って精つけねーと、お前に全部吸い取られちまうからなあ」 「誰がっ!」 あっという間にそこは、ふたりの肉争奪の凄絶な戦いの場へと姿を変える。 桃城の方が若い分パワーがあるが、テクニックでは南次郎の方が圧倒的に上だ。それでも桃城もそれなりに肉もゲットし、美味しく鍋を食べることが出来た。 「あ〜〜〜もう疲れた、俺」 ぱたんと桃城が背後へ倒れる。鍋の中はもう何も残っていない。 それを見た南次郎も箸を置き、ふうっと息をつく。 「おーい、これからお楽しみの時間……って、なんだ。寝ちまったのか?」 部活疲れの後におなか一杯になれば、当然ともいうべきだろう。 すうすうと静かな寝息を立てる様子に、南次郎は苦笑を頬に刻む。本当にまだ桃城は、子供なのだと改めて思って。 「こんなのに骨抜きなんて、俺もどうかしてるぜ」 南次郎はそっと身体をかがめて、まだ髭の予兆さえない、滑らかな頬に唇を押し当てる。 緩やかに夜が、庫裏を包み込みはじめていた。 |
毎度お馴染み 紫月さん@【Cheshire Cat】ちの10万HIT記念フリーSSs(複数形)です〜v ──つーかUP遅(^^;)。すみません毎度……(^^;)。そして送りモノできずにすみませ……(^^;)。 さて。 待ちに待ったパパ桃です! やったー!!\(^o^)/ ああああん、もう、パパさん素敵すぎ! かっこいい!!(叫) 桃ちゃんじゃなくても骨抜きさ〜! あのニヤニヤ笑いを浮かべて(エロい)それはそれはた〜のしそ〜うに桃ちゃんをいびる(をい)姿が眼に浮かぶよう……v 「そのおやじが好きなのは、どこのどいつだ?」ですってよ!? もう! かと思えば自分の息子とほぼ同い年のガキんチョ相手に真剣に肉争奪戦(笑)。らしすぎ……! でもその後、食べ疲れて(違)寝ちゃった桃ちゃんに襲いかかったりせず、優しく見守ってくれちゃうあたりがさすがオトナです〜v 南次郎さん、ラブ〜〜vv 惚れ直したぜ!! (なんか、パパへのFANコールと化している気が……(^^;)) 紫月さん、どうもありがとデス! 今年もがんばってください! (2003.1.27 UP) |