僕たちの日常・不二菊編

──written by 紫月sama@Cheshire Cat





「あ〜〜〜もう、疲れたにゃ」
「ほら、英二。あと1問だよ、頑張って」
「うー、ごめんね、不二。付き合わせちゃって」

とある日の放課後の、3年6組の光景。
クラスメイトは疾うに皆下校したり、部活動へと消えて行っている。そんななか、英二は数学の問題集と格闘していた。そもそもは、今日の授業時に提出するはずだったものだ。すっかりそれを忘れていた英二に、教師は今日中に提出するようにと告げた。そのため部活へも遅刻を余儀なくされながら、必死で問題を解いていた。

不二がいるのは、付き合うよ、と言い出したから。
彼までも部活に遅刻させるのは嫌だから、内心は嬉しくても一度は断った英二だった。けれど。
「僕がいた方が、早く終わるよ?英二も部活全休は嫌でしょ?」
そうにっこりと笑顔で言われて、結局頷いてしまったのだった。

とはいっても、不二は英二の替わりに問題を解いてやったりはしない。そのあたりきっぱりとけじめをつける彼は、英二が行き詰まっているのを見るとヒントについて口を出すというぐらいだった。それでもそれは的確でわかりやすく。それに、不二までも全休させるわけには行かないと言う思いが後押しして、英二はかなりのスピードで問題を解き終えていた。

「えっと……だから答えは――382.9uっと」
「英二、そこ8って書いてるよ。計算式は9なのに、解答欄が違ってる」
「え?…わ、ホントだ!……ううう、俺ってどうしてこうケアレスミスが多いかにゃ。え〜〜っと、…うん、これで良し!……終わったああああっ!」

パタンと問題集を閉じた英二は、うーんと思いっきり反り返って伸びをした。
ちらりと時計を見ると、5時を回ったところだ。これならまだ部活に行っても、問題ない時間だろう。机の上に散らばったシャープペンシルやら消しゴムをペンケースにしまい、それをテニスバッグに突っ込むと英二は立ち上がる。

「待って、英二」

不意に制服の裾を不二に掴まれて、英二はたたらを踏む。不二は、英二の前の自分の椅子に座ったまま、英二を見上げていた。

「な、何?」
「……僕、お礼が欲しいな」
「え?…あ、…うん。そーだよね、不二から言い出したことだけど、俺、すっごい嬉しかったし、こんなに早く終わったのも不二のおかげだもんね」
「そう…有り難う、英二」
「で、何がいい?あ〜今いいもん持ってるよ。ほら、アップル味のキャンディ。不二、林檎好きっしょ?」
「ん〜そんなものより」
「え?…あっ」

自分の上に屈みこんだ英二の頭の後ろに手を回し、ぐいと引き寄せて不二は唇を合わせた。突然のことにびっくりしているのをいいことに、易々と舌を捩じ込んで蹂躙する。たっぷりと英二の口の中を味わって解放すると、身体を支える力を無くした英二はぺたんと床に座り込んだ。

「にゃにすんだよ〜〜〜」
「だから、お礼を貰ったの」
「ふ、不二っ!こんなところでっ」
「ふたりきりだから、いいじゃない。それに…キスだけだよ」
「う〜〜〜〜」
「ほら、職員室によって先生にそれ提出して、早く部活行こう」

しかし一向に立とうとしない英二に、不二はしゃがみこんで顔を覗き込む。真っ赤になった顔がそこにあった。

「どうしたの?英二。……立てないぐらいすごかった?」
「馬鹿っ!不二の馬鹿っ!!!!」
「ごめんね、英二。英二があんまりかわいいから、つい」

にこりと微笑みかけながら手を差し伸べる。それに縋って立ち上がりながら、ぽつりと英二は呟く。ほんとうに小さな声で。

「今日……泊まりに行ってもイイ?」
「なに?…その気にしちゃった?――いいよ、今日はうちに誰もいないから。ふふ、僕も本当は今ここですぐにでもいいんだけどね」
「やっ!今はダメっ!…部活行くのっ」
「はいはい。ほら――行こう」

促されて、荷物を持ってふたりならんで教室を出た。
廊下は、夕日を浴びで真っ赤に染まっていた。


<END>




毎度お馴染み 紫月さん@【Cheshire Cat】ちの10万HIT記念フリーSSs(複数形)です〜v
──つーかUP遅(^^;)。すみません毎度……(^^;)。そして送りモノできずにすみませ……(^^;)。

さて。
不二菊〜v
不二様ってばいぢわるですね!(今更) 確信犯ですね!(当然)
そしてまんまといいようにされる英二……(笑)。少しは学べよ、と思いつつ、そこで学習しないのが英二のいいところ(笑)。
かわいいなぁ。私もこんな可愛い英二が書きたい(切実)。
カンケイないけど不二菊って七啓(@学園ヘブン)に似てるよね?(笑)←知ってるヒトだけ笑ってください。

紫月さん、どうもありがとデス! 今年もがんばってください!

(2003.1.27 UP)





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