微睡み

静かに眠る君の その瞼に口づけを落とす

震える睫毛に 透き通る頬に 艶めく唇に

触れることのない口づけは

眠りに夢中で僕を顧みない君への ささやかな悪戯









 さざなみ

波の音が聞こえた

君の声に聞こえた
君の 笑い声に

そしたら君に会いたくなった

だから来たんだ









Mermaid

涙を溜めて 海を作りましょう
私だけの海を あなたのためだけの海を
ここには誰もいない 私とあなたの他には誰も
あなたを助けるのは私 あなたが恋をするのは私
足の痛みも 愛を告げられない苦しみもなく
報われない想いに儚く泡になることもなく
ここには嵐ももう来ない
夜の海のまま
静かに凪いだ海のまま……









   水中遊泳

水の中から透かして見る景色は
不規則に歪んで それでも綺麗
耳を掠めて泡が立ち上る 君の笑顔も泡の向こう
このまま魚になれたなら どんなに気持ちがいいことか
だけど君を抱きしめられないね キスだけじゃ足りない 君の背中を抱きしめられない
背びれのようなフリルの水着をここでほどいたら怒られるかな
悪戯好きの飛び魚になって 後ろから君を抱きしめてみよう





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