「越谷さん、大好き!・・・たこ焼き食べましょ?」

その言葉で越谷の意識は現実に戻った。
本当はそこまでたこ焼きにこだわる必要はなかったのだが、真琴のお許しが出たので、気の変わらないうちに買うことにした。
出来立てのたこ焼きはおいしそうで、真琴も少し冷ましてから食べる。


「あつ・・・でも、おいし・・・」

「そりゃ、こういうところで食べるからな。家で食べるのと一味違うだろう」

「そうですねぇ。あ、越谷さんも食べます?はい、あーん」

越谷さんは差し出されたたこ焼きをついばむ。くどいようだが、その光景はバカップルそのものである。

「やっぱり真琴に食べさせてもらうと一味違うな」

「エロジジイ・・・」



どこで覚えたのか、真琴の情け容赦ない一言に、越谷は傷ついてしまう。
ちょっと後ろめたい感情もあったため、ダメージは三割くらい増している。
さっきまでの明るい空気は一転して、どんよりとした空気が漂う。






「ジジイ・・・俺は年寄りなのか・・・俺はまだ二十代なのに」





それでも、越谷はエロと言われたことよりも、真琴との年の差(というよりも30直前だということ)を相当気にしたらしい。背中を丸めていじけてしまう。

「あ、そんなことないです!越谷さんはまだ充分に若いですよ!ごめんなさい、だから機嫌直してくださいよ〜」





真琴はおろおろする。それも仕方のないことである。
真琴にとって越谷は恋人であるけど、自分を守ってくれるお兄さんのような存在でもあるのだ。
だから、このように子供みたくいじける越谷さんは真琴には対処できない。
しかも、最近どうも子供らしい仕草を見せるようになったのは気のせいだろうか。


「いいんだ、別に。子供らしいとでも思ってるんだろ?どうせ俺は子供さ」

ますます越谷はいじけた様子を見せる。
その行為自体子供っぽい・・・と突っ込むほど、真琴は愚かではなかった。


「越谷さんが子供なら、僕はどうなるんですか?」

「そうだな・・・赤ん坊といったところか?」

「ひどい・・・」

一気に立ち直った越谷に代わり、今度は真琴のほうがいじけてしまう。
だが、越谷さんは真琴の扱いはお手の物なのである。


「はいはい、そんなキュートな真琴も好きだよ」





まさに愛情の大安売り出血大サービスなのである。
かなりの人見知りで、もともとおとなしい部分もあるため、表では見せない部分もあるが、真琴は愛情に植えているところもあるので、常にそういった言葉をかけてやりたい、それが越谷が真琴を恋人にしたときに決めたことなのだ。まぁ、一回一回の言葉が安っぽくなってしまうことは否めないけれど、ほんとに大事なときには真剣に言うことにしているので、問題はない・・・本人はそう思っている。案の定真琴の機嫌が戻った。


「それじゃ、次行きましょう?」








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