のほほんと平和的に謎の男が登場する。いったい誰だ?

「あぁ、あなたが越谷さんですね?俺は池田誠二といいます。陽子の恋人です」

あの陽子に恋人がいたのか・・・。よくまぁ、あんな女についてゆく気になったものだ。
感心すると同時に納得もする。ほんわかとした、だけど腹に何か持ってそうな感じだ。
きっとこの男なら陽子と同じ波長を持っていて気が合うのだろう。
陽子のことを幸せにしてほしいなんて思うつもりは微塵もないが、彼女についていけるだけの恋人がいてほっとする。
そんなことを思っていると、何かものほしそうに誠二が越谷のほうを見る。


「どうせなら俺たちもあれをやってみませんか?」

何でそんなことになる。越谷は呆れるしかなかった。
この言い方だと、やきもちを焼いているからではないだろう。もし陽子と誠二が同類なら・・・



おそらく・・・ただ面白そうだから・・・。



拒否しても食い下がってきそうなので、仕方なく、本当に仕方なく越谷は誠二を抱きしめてみた。
誠二もそんなに低くはないはずだが、越谷が大きいからか、誠二はすっぽりと収まってしまった。
陽子と付き合っているから自分と近い年だろうけど、妙に誠二が子供っぽく見えた。
いや、子供っぽいというよりも、純粋なのだろう・・・と推測する。そんな誠二はこっそりと越谷に言う。


「あのかわいい子、恋人なんですか?俺をものすごく敵視してますけど」

「あぁ。恋人だよ。男だけどな」

苦笑しながら言うが、実は越谷にとってうれしいことである。焼きもちを焼かれるのも悪くはない。

「男だっていいじゃないですか。可愛いんだから」

「そうだよな。そう言ってもらえると嬉しいよ。しかし、これは離れたほうがいいんじゃないか?」

このままくっついていると、真琴が勘違いしてしまうことになる。
だから、そろそろ離れなければならない。急いで引っ剥がしてみると、陽子がにやにやと笑っている。



「まったく、今日初めて会ったのに、仲がいいのね。私、妬いちゃうわ」

言葉とは裏腹に、妬いてるようには見えない。それどころか楽しんでいるようにさえ見える。

「陽子、こんなに可愛い子を独り占めして・・・ひどいじゃないか。俺にもその楽しさを分けてほしいな」





本能的に危機を察知して逃げる真琴を追いかける。
身体、大丈夫なのかと突っ込めないくらいに逃げるが、やはり根本的な体力の差によって真琴は捕まり、くすぐられる。
人の恋人で遊ぶ誠二を葬り去ろうかと思ったが、浴衣の喜びを十二分に噛み締めていたので、心の中で30回暗殺するだけにしておいた。




「よしくん、よだれ」



そんな越谷の心中を察したらしい。陽子がにやついている・・・。

「あぁ、いけない」

冷静にそれをぬぐう。慌てると彼女の思う壺である。

「お前ら、俺たちで遊んで楽しいか?」

答えは解っているが、ほんの一握りの望みにかけた。

「えぇ、とても」

やっぱりそうか・・・どうせそうだろうと思っていたので、当たり前のようにそれを流す。
やっと解放された真琴がやつれた顔で来る。


「やっぱり僕たち遊ばれてるんですね・・・」

「あぁ、そうとしか思えない

一気に疲労が来、二人一緒にがっくりと肩を落とす。
一人ならまだしも、二人のペースにはついて行けない、それをはっきりと思い知らされたのだった・・・








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