『赤いヒゲオヤジ編』

「おいリナッ! こいつら剣効かないぞっ!?」
 ガウリイが剣でやたらとでかい亀にきりつけながら叫ぶ。
 斬妖剣ブラスト・ソードも通じない亀ッ!?
 うわなんだか許せねぇっ!
火炎球ファイヤー・ボール!」
 あたしは唱えていた呪文を解き放つ。むろん、斬妖剣も効かなかった敵、これくらいでは効かないだろうが、威嚇ぐらいにはなるだろう。
 燃え盛る亀。あたしは本命の呪文を唱えだし……
 ぽへっ。
「うそっ!? 効いたっ!?」
 あっさり燃え尽き跡形もなくなった亀を見ながら、思わず叫ぶ。
「呪文しか通じないのかもしれないな――」
 エイプリルがつぶやいて、呪文を唱えだす。
氷の槍アイシクル・ランス!」
 氷の槍はまっすぐ亀に飛んで――
「効かないしッ!?」
「まじかぁっ!」
 混乱するあたしたち。そこに――
「リナさんリナさん」
 ゼロスが緊迫感のかけらもない声を上げる。あたしはそちらをきっ! とにらんだ。
「なによッ!?」
「この亀、踏むと甲羅の中に入っちゃいますよ」
 ………………
「情けなッ……あたしたちンなのに真剣になってたわけ……?」
「この世界人間が居ないみたいですし……帰りますか?」
 ゼロスが言ったその瞬間!
 向こうからやたらとちっちゃいオヤジがやってくる!
「ンなッ!? なにあれッ!」
 あたしは思わず叫んだ。そのオヤジはブロックを下からたたくと、そこからキノコがみゅみゅみゅっと出てきて、おもむろにオヤジはそれをぱくついて……
「いやぁぁぁぁぁっ!? いっやぁあぁぁぁっ!」
 あたしは思わず絶叫した。
 当然である。
 キノコ食った瞬間に巨大化するオヤジなど、恐怖と憎悪の対象以外の何物でもないッ!
「逃げるわよッ! みんな!」
 あたしの言葉にゼロス以下全員が、いちもにもなく頷いた。
 ――帰ってきた今でも思う。
 あれは……人間だったんだろーかと……




『ピンクの悪魔編』

「これはまた――ほのぼのとした場所ねー……」
 道端に浮いてるお菓子やらなにやらを食べながら疾走するピンクの丸い物体を見ながら、あたしはぼーぜんと呟く。
 ――なんか――どーでもよくなってきたし……
「次の世界行きましょーか……」
 あまりにほのぼのしてて頭痛がしてきたのか、ゼロスが力なく言った。
「……そーね」
 食う気なのか、木から降ってくるでかいリンゴでこぶ作りまくりながらがんばってるガウリイをみながら、あたしはやはり力なくうなずいた……




『ネズミの大嫌いな丸いロボット編』

「……飛んでるわよね……あれ……」
 上空にどう見ても丸くでかい頭に丸い胴体、それにおまけ程度についた短い手足……
 あれ……生き物?
「あの小さいプロペラ程度で飛べるなんて……すごいですねぇ」
 ゼロスは素直に感心している。
 ……いや……あたしも感心してるけど……あるイミ……
「行きましょ。こんなところでボーっとしてても無意味だわ」
 あたしの提案に、ゼロスはかすかに眉をひそめる。
「でもこの世界には人間が居ますし、僕も仕事しないと……」
「いーから次の世界に行くのっ!こんなところに居たら、こっちの頭が変になるっ!」
「はぁ……」




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