うつ病理解の重要キーワード



うつ病は脳の化学物質障害の病気であることはうつ病は体の病気・臓器の病気のところでお話しました。
もう5年近くこのHPを運営して、多分何百人といううつ病患者さんたちと私は接してきたと思います。講演で実際お会いしたり、忙しくなる前の大学時代には何人かとお会いしたりもしました
本の執筆をきっかけに、自分の闘病記録を読んだりしても思いましたが、本当にうつ病の症状は様々です。
また、うつ病は人によっては一ヶ月で治ったり、長い方だと10年かかったり、何度も再発を繰り返したりすることもあるので、具体的にこれくらいの症状ならあとどれくらいで治るというのも、専門家であるお医者様でもわかりません
しかし悲観的になることはないと思います。
うつ病患者さんは確かに年々増えていますが、私や、私以外の人でもうつ病を治した人はたくさんいます。
長いHP運営経験から、うつ病時代に知り合った病気の友達が、今では私と同じように病気を治して幸せに暮らしている人をたくさん知っています
うつ病は治らない病気ではありません

ここでは、私の実体験や、ホームページでお世話になった方たちとのふれあいを通じて感じた、うつ病の共通点についてお話したいと思います。


キーワード1・感情のコントロールがきかない

患者さんに共通して言えることは、病気の患者さんは感情のコントロールができない状態であることです
ちょっとした否定的な言葉や、ちょっとした冷たい態度によって生じる悲しい気持ちが、理性のブレーキも効かない状態でどんどん増幅していってしまう傾向が強く感じられます
やはりうつ病が、脳内の化学物質の障害であるからでしょうか。
私は少し特殊な例で、いつ辺りからうつ病になったとハッキリわかる状況でうつ病を発症しました。そして治った今、うつ病時代の私の記録を見ていても、やはり同じように感情のコントロールが効かない状態だったなと思います
例えば、会う約束をしていたけれど、今日は仕事でどうしても行けなくなったと恋人や家族に言われたとしましょう。
健康な人であっても、多少は快くない気持ちにはなると思います。何故なら「私は貴方にとってそんな軽んじられる存在なのかな」とか、「私は必要じゃないのかな」「約束を破るなんて酷い」という、理性を抜きにした裸の感情を誰もが持っているからです。
しかし、健康な人であれば「仕事ならしょうがない」とか「ああ、そういえばこの人××プロジェクトも受け持っていたから忙しいんだな」とか、そういう風に理性のブレーキがかかります。なので丁寧に謝ってもらえたりすれば、たいていの人はそこで不快な気持ちはやわらいで、すぐ忘れてしまうことでしょう
けれども、うつ病患者さんの場合はそういうことが、なかなか上手くできなくなっている状態であるような気がします。
脳内の化学物質バランスが良くないためか、悲しい気持ちがどんどん膨れ上がって止まらなくなってしまうのです。それは自分の努力でどうにもできないような、物凄い力を持っています。
この巨大な力は、うつ病を経験した人にしかわからないかもしれません。
実際、私が病気だった時は悲しい時は悲しい気持ちが止まらなくてずーっと苦しかったですし、憎悪の気持ちが発生すると止まらなくなっていました。
そして掲示板などでお世話になっている患者さんたちを見ていても、同様のことが見てとれるのです
現代の医学でで今わかっていることは、セロトニンという脳内の神経伝達物質がうつ病の患者さんは凄く少なくなっているということです
脳内伝達物質というのは、細胞と細胞の間で情報をやりとりする物質です。
私が推察するに、要するに思考する時に使うセロトニンが足りない→考えがまとまらない→感情が止まらない、になっている気がしてなりません
実際体調がよい時の患者さんはいたって正常な、とても常識のある優しい方ばかりです。
セロトニンが少なくなっていることにより、このような感情が暴れ馬のごとく止められない症状が出ているのかなと私は考えます。実際私もうつ病時代の経験を思い出してみると、本当にこんな感じがするのです。
脳内で実際にセロトニンが少ないということが起こっている以上、骨折の人に杖を持たずに無理に歩かせようとしても歩けないように、うつ病患者さんがどれほど努力したところで、その暴走した感情を止めることはとても難しいです。本当に、本人の力ではどうにもなりません
この「感情のコントロールが効かない」ということを頭に入れてうつ病の症状について知っていくと、とても理解しやすいのではないかと思います


キーワード2・愛に飢えた子供

私を含め、半年以上などの長期に渡ってうつ病で苦しんでいる人は、大抵ほとんどの場合が親との関係が上手くいっていない場合が多いようです。
私も、親との擦れ違いに苦しんできました。
今こうしてうつ病が治ってから、両親をよく見ていると、勿論私も子供の頃は精神的に幼かったですが、私の親もまた精神的に少し未熟であるように思います。それが不器用さという形のない刃として、私たち子供に降り注いでいました
私はその両親に愛されようと必死になりながら、うつ病発症までを生きてきました。
愛されてる実感がなくて、不安で寂しくて、愛されようと必死でいい子を演じていました。

小さい子供にとって、親は神さまです。
親に見捨てられたら子供は生きていけないことを、子供は本能で知っています。
だから親に愛されようとします。それはどんな子供にでもある、ごく普通のことです。
しかし一部の人たちは、人は褒められて育つものであることを知りません。あまり褒めてもらえない、抱き締めてもらえない、注意はされるけど愛してるとは言ってもらえない
そんなところから、少しずつ子供は「親に愛されていないかもしれない」という不安感の中で生きるようになるのでしょう。私はそうでした
「言わなくてもわかれ」という気持ちが親にはあるのでしょうが、私にはわからなかった。
その不安を払拭するために、子供はさらに親に愛されようと必死になります。「いい子」になろうとします。
でも、どんな人間だって完璧にはなれないから、完璧ないい子には誰もなれません。
何か失敗するたびに酷い自己嫌悪になり、そんな私を私は嫌いでした。親にもっと愛してもらえるような、もっといい子になりたいのにって…
うつ病の患者さんは「いい子でないと、愛してもらえない」と思っている人が多いように思います。私も、そうでした。
そのため、うつ病患者さんはなかなか自分の思ったことを言えない人が多いです。何故なら自分の意見を言うことは親にとって「いい子」ではないことを知っているからこそ、悪いことであるような強迫観念を抱いてしまっているからなんです。
こんなこと言って相手の気分を害したらどうしよう、怒られたらどうしよう、そんな気持ちからなかなか自分の素直な気持ちを口にできない。何故そうなるか。それは心の中に愛されたいという渇望があるからなんです。
愛されたいから、相手に少しでも迷惑になりそうなことは言えない
愛されたいから、泣き叫びたい気持ちを抑えて黙ってしまう。
全部全部、愛されたいからなんです。
だからこそ人のために頑張ろうとしがちで、自分以外の他人へのマイナス感情を持つことに対して罪悪感してしまう傾向が強いのです。
人を傷つけるよりは自分を傷つけた方がマシ、こんなマイナス感情を持っている自分に対する罪悪感、無力感から自傷に至るのも、そのためです。

人は誰しも、愛されたいと泣き叫ぶ自分をどこかに抱えているものだとは思います。しかしうつ病患者さんはそれが特に顕著に出ているんだと思います。
それは悪いことでも何でもありません。今まで愛されたいと思いつつ我慢してきた気持ちが、病気になった今噴き出しているだけなんです

だからこそ、うつ病患者さんには背中や頭を撫でてあげたり、抱き締めてあげたりというスキンシップが大事になってくるだと思います。
病気のせいで加速した感情も、そうやって人のぬくもりに触れていると、少しずつ和らいでいく。うつ病時代そんな経験を何度もしました。
他のトピックで紹介しているように、うつ病患者さんに反論してはいけないというのもここから来ています。
ありのままの、弱くて情けない自分を、認めて愛して欲しいという気持ちがうつ病患者さんには必ずあると思います。その心の隙間を埋めるために、また不安定な心を落ち着けるためにも、うつ病患者さんのことを受け止めてあげて欲しいのです
その安心感こそが、早期うつ病解決の鍵になってくると思います。患者さんを支えている人たちができる、患者さんにとっての一番の支えです。


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