■2002年7月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル



ニュース


●市民運動
ヒトES細胞計画承認に反対する市民集会開催

 5月15日、都内で緊急市民シンポジウム「STOP! ES細胞」が開かれた。3月末に京都大学のヒトES細胞(本誌2002年6月号)作成計画が文科省の専門委員会で承認されたことを受け、市民グループのDNA問題研究会が急遽開催したもので、まもなく臨床研究という名の人体実験が始まり、工業生産に移る危険性が指摘された。

●省庁動向
各省、カルタヘナ議定書関係の中間報告出揃う

 生物多様性条約カルタヘナ議定書の批准に向けて、国内で法律を作るため、関連省庁で審議会が作られ、議論が行われてきた。遺伝子組み換え生物の環境への影響を規制するのが目的である。
 4月5日に経産省、続いて、5月20日に文科省、5月27日に環境省が中間報告、5月10日に農水省が中間報告骨子をまとめた。
 経産、文科、農水省では、カルタヘナ議定書に則って法制化するのは規制の大枠のみで、細かな取り決めについてはその下に指針を設け、現行の指針をほぼそのままスライドさせて使うことになったため、規制の強化には至らないことになる。

食品安全行政で新組織設立の動き

 厚相と農相の私的諮問機関「BSE問題に関する調査検討委員会」が4月2日にまとめた報告書では、食品行政を統括する組織として独立性・一貫性があり、各省との調整機能を持つ機関の新設が提言された。これを受け、食品安全行政に関する関係閣僚会議が開かれ、5月31日に新組織の政府案が発表された。
 新組織の委員会が情報の収集や整理を行い、食品が人体に与える影響を科学的に調査したのち、厚労、農水両省に勧告する。この新組織の委員会のメンバー構成には、消費者団体の代表を入れずに専門家に限るとしている。

農水省、未承認GM作物の輸入を事実上容認

  4月25日、農水省農業資材審議会飼料分科会は、未承認遺伝子組み換え作物に関して、1%未満なら混入を許容する方針を確認した。「日本と同程度の安全性審査基準を持つ外国の審査を通過していれば」という条件が付けられているものの、これによって今後スターリンクのような未承認作物混入も違反とならなくなる。

農水省が「食と農の再生」研究開発プロジェクト

 日本政府は、4月23日に開かれた総合科学技術会議本会議で、停滞する日本経済の再生のための技術開発プロジェクトを発表した。各省が予算を重点配分する分野を出しあったものだが、バイオテクノロジーと情報技術を組み合わせたプロジェクトが数多く含まれている。農水省は、「食と農の再生」研究開発プロジェクトをまとめ、ポスト・イネゲノム研究を中心に研究開発を進めていくことになった。詳細は6月中にまとめられる予定。

農水省、トレーサビリティ、2003年の牛肉から?

  農水省は、4月11日に発表した「『食』と『農』の再生プラン」の中で、2003年からトレーサビリティ・システムを導入することを打ち出した。BSEをきっかけに広がった食品偽装事件や不正表示で、食品の安全性に対する信用が著しく失墜したことへの対応策である。このシステムを遺伝子組み換え作物にまで導入するか否かは未定であり、当面は牛肉だけにとどまる可能性が大きい。

農環研、一般説明会を開催

 トウモロコシの遺伝子を導入したイネなど3品種4品目の遺伝子組み換え作物の隔離圃場での栽培に先立ち、5月30日に茨城県つくば市の独立行政法人「農業環境技術研究所」で一般説明会が開かれた。説明会の時間はわずか1時間半で、しかもその中に担当者からの説明や圃場の見学も含まれているため、実質的な質疑応答の時間はほとんどなかった。


ことば
*カルタヘナ議定書
  
1992年に採択された生物多様性条約に、その検討が明記されたバイオセーフティーに関する議定書で、名前は99年2月に会議を開いたコロンビアのカルタヘナからとった。詳細は本誌2002年3月号、キーワード参照。