■2011年3月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
●GMトマトのラットへの異常明らかに

 世界で最初に市場化された後、すぐに消えてしまった日持ちするGMトマト「フレーバーセイバー」に、人に健康被害をもたらす可能性のある動物実験例があったことがわかった。1993年に米カルジーン社が米国食品医薬品局(FDA)に提出した4万4000もの審査書類が公開され明らかになった。カルジーン社はその後モンサント社に吸収された。
 その動物実験データによると、GMトマトを食べたラットは、20匹中7匹の胃に障害が発生していた。対照群の通常のトマトを食べさせたラットには、1匹も異常はなかった。またほかの研究では、GMトマトを食べた40匹のラットの内7匹が2週間以内に死亡し、対照群は40匹中1匹の死亡にとどまった。実験結果を受けて、FDAの科学者が警告を発したが、それが無視され承認されていた。 〔The Huffington Post 2010/12/31〕
●GM昆虫
●マレーシアでも秘密裡にGM蚊を野外放出

 マレーシアのメディカル・リサーチ研究所は、昨年12月21日に密かにGM蚊の野外放出実験を行っていたことを、約1カ月後に明らかにした。実験に用いた蚊は、雄のハマダラカで、ベントン近郊の森に6000匹を放出した。その際、通常の雄のハマダラカも同数放出した。
 西インド諸島にあるケイマン諸島で行われた野外放出実験同様、秘密裡に実験が強行されていたことに、国内外でGMO推進研究者を含め批判が強まっている。マレーシアの環境保護団体・消費者団体も、その秘密主義を強く非難した。
 秘密主義への批判の矛先は政府にも向けられている。政府はいったんGM蚊の野外放出実験は一時中止と発表したが(前号参照)、その直後に実験が行われていたからである。しかも、現政府が打ち出しているキャッチフレーズの1つが、透明性であり、それを裏切る行為である。 〔The Star 2011/1/30ほか〕

●GM魚
●GM鮭承認をめぐり、国政、州政府動きだす

 カナダ・プリンスエドワード島でGM鮭反対運動に取り組んでいる環境保護団体「エンバイロメント・カナダ」は、プリンスエドワード州のロバート・ギズ首相と会い、同島にあるアクアバウンティ・テクノロジー社の輸出プラントについて、情報公開など透明性を求めるよう、同意を取り付けた。
 GM鮭の安全審査を進めている米国食品医薬品(FDA)は、口を閉ざしたままである。米国の国会議員の間では、承認に歯止めをかけるために食品表示を求める声があがっている。
 州政府でも問題視する声が広がり、カリフォルニア州とアラスカ州は、表示を求めて動きだした。アラスカ州選出の上院議員マーク・ベギッヒとリサ・ムルコフスキーは、GM鮭禁止法案を連邦議会に提出した。両議員はGM鮭承認に反対しており、法案提出にあたり「アラスカの鮭漁への影響を懸念する」と述べた。また、自然保護団体は「フランケン・フィッシュ」と表示すべきだと主張している。 〔Juneau Empire 2011/2/1ほか〕

●GM汚染
●西オーストラリア州の有機農家への批判と反論

 西オーストラリア州で隣人が栽培したGMナタネに汚染され、有機認証を取り消された農家が、隣人を相手取り訴訟を起こす姿勢を示していることに対して、畜産業者&牧場主協会(PGA)は、「西オーストラリア州の農業の進歩を妨げるものだ」と批判した。農家の弁護士は、「PGAの姿勢は失望をもたらす」という声明を発表した。「すべての農家に平等の権利が与えられており、オーストラリアの有機の規格に基づいた農業を営んできた農家がないがしろにされることは許されない話である。また、彼は一度もGMナタネを栽培した隣人を批判していない」と述べた。 〔Farm Weekly 2011/1/21ほか〕
●オセアニア事情
●オーストラリアで牧草用GMシロツメクサ試験栽培

 オーストラリアのビクトリア州政府第一次産業省(DPI)が、アルファルファ・モザイク・ウイルスに抵抗力を持つようにした、GMシロツメクサの野外試験栽培を始めた。シロツメクサは牧草に使われている。DPIの研究者ジャーマン・シュパンゲンベルクは、試験栽培後、承認を得て商業栽培に至るまでに最低3年はかかる、と述べた。 〔Weekly Times 2011/1/14〕


●北米事情
●米国政府、GMアルファルファに再びゴーサイン

 1月27日、米国農務省は、環境影響評価が不十分だとして栽培中止命令が出されていたGMアルファルファについて、ふたたびゴーサインを出した。昨年12月27日に発表された「環境影響報告書」によって、裁判所の指摘をクリアしたという。
 決定に対して有機食品団体「Organic TradeAssociation」は、「失望をもたらした」という声明を発表した。米国ではGMO汚染から有機農業を保護する政策がまったくとられておらず、この決定によって状況はさらに悪化する可能性が大きい、というのがその理由である。
 また、食品安全センターなどの消費者団体や農業団体は、訴訟を起こすことを明らかにした。食品安全センター代表のアンドリュー・キンブレルは、すでにほとんどのアルファルファ栽培農家がGM種子を購入しており、農務省の決定はそれを前提にしている、と同省の対応を批判した。 〔Capital Press 2011/2/3ほか〕

●米国自然保護区域でのGM作物栽培禁止へ

 米国魚類野生生物局は、北部12州にあるすべての自然保護区域でのGM作物栽培禁止に同意した。これは、消費者団体などが起こした裁判の和解に応じたもの。消費者団体などは、さらに合衆国内にある最大75の野生生物保護地域でのGM作物栽培禁止を求めて、新たな訴訟を準備している。他方、魚類野生生物局は、野生生物保護地域でGM作物の栽培に関する環境影響評価を行っている。 〔The Post-Standard 2011/1/10ほか〕

●メキシコでの新たな実験認められず

 メキシコ政府は、北部で計画されていたモンサント社によるGMトウモロコシ栽培計画を認めなかった。メキシコの伝統的な品種に影響を及ぼさないという保証が得られなかった、というのがその理由である。〔Business Week 2011/1/27〕