■2012年5月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●米国のGM作物承認手続きスピードアップ

 米国農務省によるGM作物の承認手続きのスピードが加速している。現在承認手続きが進められているモンサント社の除草剤ジカンバ耐性大豆とダウ・ケミカル社の除草剤2,4-D耐性大豆は、従来3年かかっていた審査期間が13〜16カ月と、半分の期間で行われる。今後、承認手続きの簡素化はさらに進みそうである。〔Bloomberg 2012/3/9〕

●有機農家のGMO特許権裁判、請求棄却

 有機栽培種子の生産者や農業団体がモンサント社を訴えていた裁判で、米国マンハッタン連邦地方裁判所が1月31日、原告の訴えを棄却した。原告は、栽培した作物がGMOに汚染された場合、モンサント社に特許権侵害で訴えられ、栽培をやめざるを得なくなっているとして、司法による保護を求め、また、モンサント社が取得する種子の特許は不当であるとして、昨年3月に提訴していた。 〔Organic Seed Growers and Trade Association 2012/2/27〕

 訴えが棄却された農家らは3月28日、「農家はGM作物の持つ特許の脅威の下にある。家族や消費者のために必要な有機の種子を守り、作物を作る権利が冒されている」として上告した。 〔Thomson Reuters 2012/3/28〕

●米国大手スーパーにスイートコーン不売を求める

 米国の食品安全センターなど多くの消費者団体は、モンサント社のGMスイートコーンを販売しないよう大手スーパーマーケット・ウォルマートに署名を提出した。署名総数は46万3681筆に達している。ウォルマートは、GM表示がない状態で、消費者が購入することがないよう望む、と述べた。 〔Center for Food Safety 2012/3/15〕
●南米事情
●チリで「GM作物栽培地を知る権利」得られる

 チリの環境保護団体がかねてより政府に要求していた、「GM作物栽培地を知る権利」を勝ち取った。2010年に出されていた結論が、3月21日の「透明性を守るための会議」で確定した。2010年の結論に対しては、農業・畜産業界団体が反対し、結論の取り消しを求めてモンサント社が訴えていた。 〔GM Watch 2012/3/23〕
●欧州事情
●英国政府がGM小麦の野外試験承認

 英国ハートフォードシャー州にあるローザムステッド研究所圃場で予定されている、GM小麦の野外試験栽培が最終的な承認を得(本誌2011年11月号参照)、同国で初めてGM小麦の試験栽培が始まった。このGM小麦は、アブラムシが出す警戒物質を出すように改造して、アブラムシを寄せ付けないようにしたもの。環境保護団体は、農家や食品産業に対してGM小麦を用いないよう呼びかけるとともに、政府に対してGMOではなく、持続可能な農業に予算を出すよう求めた。〔The Scotish Farmer 2012/3/1〕

●欧州委員会がモンサント人脈就任要請

 EUの行政組織である欧州委員会(EC)は、元モンサント社の社員で食品関連ロビイストとして知られるMella Frewenを、欧州食品安全庁(EFSA)の役員に就任させるよう求めた。彼女は「Food Drink Europe」のロビイストとして、2007年以来、食品業界の圧力団体の中心にいた。 〔Test biotech 2012/3/8〕

●ウクライナのGM食品比率、50%から5%に

 ウクライナ政府はこの間、GM食品に関する法的規制を強化してきた。ウクライナ食品実験研究センター代表のウラジーミル・セベノビッチによれば、その結果、2007年に全食品中50%程度あったGM原材料を含んだ食品が、2008年には8%までに減少し、現在は5%に減少した。米国とカナダはこの規制政策に強く反対している。〔All About Feed 2012/3/22〕

●養蜂家抗議にポーランド政府、「MON810」を禁止へ

 3月15日ポーランドの首都ワルシャワで、1500人を超える養蜂家とその支持者がデモを行った。数千匹の蜂の死骸を農業省の入り口に並べ、GM作物とそれに使われる農薬が蜂を殺したとして抗議した。〔The People Voice 2012/3/22〕
 抗議を受けて農相マレク・サビッキーは、モンサント社の殺虫性トウモロコシ「MON810」の栽培を禁止する法令の施行に向けて手続きをすすめていることを明らかにした。 〔AFP 2012/4/4〕
 
●ポーランドで新たなGM種子法案審議入り

 政府がGM種子法案を提出し、議会で審議が始まった。2月23日、同法案が個人輸入の名のもとにGM種子導入に道を開くとして、ポーランドの環境保護団体は国会に向けてデモ行進をした。2006年にポーランドで成立したGM種子を禁止する法律が、EUの政策に反するとEU司法裁判所に判断されたのを受け、今回新たな法案が議会に提出された。 〔The News 2012/2/29〕
●アフリカ事情
●ISAAAの年次報告に南アの市民団体が反論

 2012年3月、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)がGM作物栽培の年次報告を発表し、南アフリカではGM作物が好況で、農民や消費者を含め、広範に利益をもたらしている、と報告した。これに対してアフリカ・バイオセーフティ・センターは、GM作物は南アフリカにおける食料の安定供給にも、食料価格の高騰を抑えることにも役立っていない、と反論した。2008年1月から2012年1月の期間に、コーンミールの価格は83%も急騰している。2007年に、人口の30%を占める最貧困層の月収に占める食費(主食のトウモロコシを含む)の割合は約22%だったが、最新の数字ではそれが約39%に増えている。南アフリカは2010年に1280万トンの記録的なトウモロコシ収穫量をあげたが、国民のほぼ4人に1人が、食料を安定的に得られていない状態にある。2005年には5%だった種子の経費は、いまや農家の生産コストの13%に達しているという。 〔African Centre for Biosafety 2012/3/11〕