■2002年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え食品
有機食品からGM大豆検出


 農水省は8月28日、同省総合食料局品質課が、6月中旬から7月末日にわたって、有機JAS格付け食品として認められた大豆食品54食品と、「有機大豆使用」と表示されている納豆と豆腐22食品を調べたところ、前者では14食品、後者では11食品、計25食品(32.9%)から遺伝子組み換え作物の遺伝子が検出された、と発表した。
 有機JAS規格の認定をとるためには、絶対に遺伝子組み換え作物が混入してはならないのにもかかわらず、約3割から検出されたことになる。
 農水省は、JAS法違反、品質表示基準違反の疑いがあるとして、製造した工場に立ち入り調査を行った。

有機JAS格付け食品
  調査数 組み換え遺伝子不検出 組み換え遺伝子検出 分析不能
豆腐 29 20 9 0
納豆 25 15 5 5

有機大豆使用・強調表示食品

  調査数 組み換え遺伝子不検出 組み換え遺伝子検出 分析不能
豆腐 18 7 11 0
納豆 4 2 0 2

●遺伝子組み換え作物
農業生物資源研究所などが新GM稲開発

 農業生物資源研究所、名古屋大学、東京大学、理化学研究所の研究グループが、ジベレリン関連遺伝子を用いて背丈の低い稲を開発した。背丈が低いと倒れにくくなるというメリットがある。これまで矮化を行う際に問題になっていた、花の形成が阻害されるなどの問題点がないのが特徴だという。

クロップデザイン社、中国でGM稲の実験開始

 ベルギーで高収量稲の開発を進めていたクロップデザイン社が、6月末から中国の圃場で実験を開始していたことがわかった。これは同社のヘルマン・ヴァン・メラート最高責任者が来日した際に明らかにしたもので、中国国立稲研究所との共同試験である。同氏は、ヨーロッパや日本では遺伝子組み換え稲の普及に時間がかかるため、まず、米国、南米、中国、東南アジアでビジネスを展開していく、と語った。 〔日経バイオテク2002/7/29〕

GMリンゴ開発進む

 農業技術研究機構果樹研究所が、接ぎ木から開花までの時間を短縮したリンゴを開発した。研究は「王林」で行われ、開発した組み換えリンゴの茎頂部を台木に接ぎ木したところ、約8カ月で開化し、結実させ、種子も採取した。同様の条件で非組み換えのリンゴを接ぎ木したところ、約6年たっても開花していない。今後は、「ふじ」などの品種での実験、他の果樹での実験も行う予定。


●クローン
韓国で遺伝子組み換え体細胞クローン豚

 8月7日、ソウル大学獣医学科の黄禹錫教授のチームは、遺伝子組み換え豚のクローンを誕生させたと発表した。5日の午後10時30分、7頭妊娠したうちの1頭が誕生したが、6日午後2時に死亡したという。遺伝子組み換え体細胞クローン豚の誕生は、英国・米国・台湾に続いて4頭目である。この豚に組み込んだのは発光遺伝子である。生後1日での死亡は、遺伝子組み換えとクローンの組み合わせが、生物にさまざまな問題を引き起こすことを示している。〔朝鮮日報2002/8/7〕
 豚の臓器は人間に近いため、人間への移植用遺伝子組み換え豚の開発が注目されている。


●食品表示
米国で遺伝子組み換え任意表示


 米農務省は8月6日、遺伝子組み換え作物の出荷の際に「遺伝子組み換え作物か否かの検査を受けた」という表示制度の導入を決定した。「表示不要」とする従来の方針からの転換のようだが、法律での裏づけがない上、「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換えでない」という具体的な表示ではない、検査済みか否か、というあいまいな表示であることから、実効性が疑われている。


●ES細胞
ヒトES細胞樹立計画の提供医療機関を追加

 9月11日、第11回特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、京都大学のヒトES細胞樹立計画にともなう受精卵の提供医療機関として、慶応大学付属病院の追加を認めた。京大の樹立計画は今年3月にすでに承認されているが、このときの提供医療機関は豊橋市民病院だけだった。しかし、提供者があらわれなかったため計画は難航し、提供医療機関の追加となった。
 またこの日、継続審議となっていた信州大学のヒトES細胞使用計画の承認が、学内での議論がまだ足りないとの理由から再び見送られた。信州大の計画書や申請書は非公開のまま審査されているため、信州大と文科省のそれぞれに情報公開の請求がされている。

英政府、ヒトES細胞バンク設立へ

 英政府は、再生医療のカギを握るといわれるヒトES細胞を大量に保存し、研究者に配布するためのバンク設立を発表した。ヒトES細胞の公的なバンクとしては世界初となる。保存されるのは不妊治療の際に出るいわゆる「余剰胚」から作られたものだという。日本でも現在、再生医療を後押しするための臍帯血から採取した幹細胞バンクの計画が進められている。    〔読売新聞ほか〕


ことば
*有機JAS格付け食品
 日本農林規格(JAS)法に基づき国に登録した認定機関が有機食品であると認定し、有機JASマークを使用できる。同法は「有機農産物」を「遺伝子組み換え技術を用いて生産されたものではないこと」と定めている。

*矮化
 丈を低くすること。

*臍帯血
 胎児と母親の胎盤をつなぐへその緒に含まれる血液のこと。造血幹細胞が豊かで
、免疫拒絶反応も起きにくいという特徴がある。