■2002年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル



ニュース


●遺伝子組み換え動物
遺伝子組み換え魚とクローンペットは禁止を

 英科学者助言委員会は、バイオテクノロジーに関する報告をまとめ政府に提言した。その中で、遺伝子組み換え魚は、たとえ囲いの中で養殖したとしても、逃げ出すなど予期できない問題を起こす可能性があり、いったん逃げ出すと呼び戻すことができなくなるため禁止すべきだ、としている。
 また、クローンペットは、お気に入りのペットの作成や再生といった目的で使われる可能性が高く、そのような目的のためにクローン技術を使うべきではないとして、これも禁止を求めた。  〔New Sciencetist 2002/9/2〕

全米研究協議会がGM動物の危険性を認める

 全米研究協議会(NRC)は、遺伝子組み換え動物開発は生態系に大きなリスクをもたらしかねない、という報告をまとめた。この報告は、FDA(全米食品医薬品局)の依頼により、遺伝子組み換え動物が実用化に向かっていることに関して、生態系への影響、動物の臓器を人間に移植する危険性、食品として用いた際の人への影響の3つの点から分析した。同委員会がもっとも強く警告を発したのは、遺伝子組み換え動物が環境中に侵入し生態系を破壊しかねない点だった。異種間移植に関しては病原性ウイルスの伝染を指摘し、食品としては新しいアレルゲンの出現を懸念している。〔サイエンス・オンライン2002/8/23〕

●企業動向
モンサント社CEO、前言を撤回

 モンサント社ヘンドリック・バーフェイリー最高経営責任者(CEO)は、さる5月、2003年には10億ドルの売上増になると発表した(本誌2002年7月号)。しかし、ここにきて売上増はわずかと修正した。この発言の背景には、世界各国で遺伝子組み換え作物への強い反対運動に直面し、とくに反対の意志が強いヨーロッパと、経済の混乱がつづくブラジルでの販売が2005年まで難しいと判断したためである。     〔ガーディアン2002/8/19〕

モンサント社、農業バイオ事業のみに

 モンサント社は農薬、医薬品、農業バイオを3つの柱にして事業を行ってきたが、前2者の事業を失いつつある。すでに医薬品事業はファルマシア社に売却したが、主力だった農薬事業も除草剤ラウンドアップの主成分・グリホサートの特許が2000年9月に切れ、模造品が広まったため売り上げが激減した。そのため、日本支社が農薬部門を日産化学に売却するなど、農薬事業から撤退している。いまや遺伝子組み換え作物のみの企業になりつつある同社について、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「前途多難だ」と報道している。〔株式ニュース2002/8/20〕


●海外事情
GM作物をめぐって緑の党閣外協力見送り

 7月27日に行われたニュージーランドの総選挙で、与党・労働党は、革新連合党との連立、中道の統一未来党の閣外協力を取りつけ、政権を継続させた。しかし、これまで閣外協力の関係にあった緑の党は、遺伝子組み換え作物の商業作付け解禁を検討している労働党とは意見が合わない、として閣外協力を見送った。

中国でGM食品についてアンケート調査

 7月4日から8日までタイのチェンマイでアジアワークショップが開かれた。その中で、中国広州市内閣統計局の、都市生活者7000人に対する遺伝子組み換え食品に関するインタヴュー形式による調査結果が明らかになった。それによると遺伝子組み換え食品を知っている人は12%、食べることへの不安を表明している人は25%だった。半数以上の人が名前さえまったく知らない現状が明らかになり、この情報不足は、遺伝子組み換え作物がどんなものかを知らずに作付けしている農家にも当てはまると、中国のNGOは指摘している。

フィリピンでもGM作物引き抜き運動

 アジアワークショップによれば、いま世界各地で遺伝子組み換え作物の引き抜き運動が行われているが、フィリピンでも行われたという。
 モンサント社によって遺伝子組み換えトウモロコシの野外実験が進められているフィリピンでは、農家・市民団体・学生・キリスト教団体などのGM反対グループが、地方自治体、議会、裁判所に対して実験停止の要請を行ってきた。それらがことごとく却下されたため、これらのグループは、昨年8月29日、フィリピン・ミンダナオ島サウスコタバトにある、1700uの実験栽培場に作付けされていたモンサント社のBtトウモロコシを引き抜いたという。

スリランカのGM規制法いまだ施行されず

 アジアワークショップによれば、スリランカでは2001年4月6日に遺伝子組み換え食品規制法が発表され、5月1日から施行されるはずだった。大豆、トウモロコシ、トマト、テンサイ、その他、微生物発酵食品に至るまで遺伝子組み換え食品を禁止し、輸入業者はそれらにGM成分が含まれていないことを証明しなければならない、という厳しい内容だった。
 この規制法に対して、もしこの規制を取りやめなければ通商関係と援助を見直すと脅すなど、WTO(世界貿易機関)やオーストラリアなど生産国から激しい圧力がかかり、施行は無期限延期の状態になっている。市民団体は、度重なる実施要求が無視されたため、規制法の施行を求める訴訟を計画している。