■2013年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●GM鮭の環境影響評価書案発表、「安全」と評価


 2012年12月21日、米国FDA(食品医薬品局)は、遺伝子組み換え(GM)動物食品としては初めてとなる、2倍の成長スピードを持つ鮭について、環境への影響はないとする「環境影響評価書」案を発表した。米国のベンチャー企業アクアバウンティ・テクノロジーズ社が、研究所のあるカナダ・プリンスエドワード島で開発したものである。評価の中には、食品の安全性も含まれている。

 評価書案がまとめられたのは5月4日だったが、なぜ発表まで半年以上かかったのか。考えられる理由は大統領選挙だと、米国の報道機関は伝えている。オバマ大統領が消費者から嫌われないように先延ばしをはかったことと、もう一つ、大統領選と同時に行われたGM食品表示を求めたカリフォルニア州の住民投票に大きな影響をもたらすことになるため、バイテク企業などから強い圧力があったと考えられている。この評価書案は、一般からの意見を募集した後、正式に承認され、その後、GM鮭の米国内での流通が可能になる。〔New York Times 2012/12/21ほか〕

 このGM鮭は、日本の食卓の問題でもある。現在、日本の食卓に出回る鮭の多くが、輸入品になってしまった。国内生産量は減り続け、1996年の37万385トンをピークに、2010年には19万7900トンにまで落ち込んでいる。代わりに増え続けたのが輸入品で、2010年には24万8674トンと、国内生産量をかなり上回った。輸入先は90年代までは米国やカナダ産が多かったが、いまや半数超をチリ産が占め、しかも天然ものが激減、大半が養殖ものになった。
 養殖が増えたことに目を付けたのがアクア社である。GM鮭を養殖の主役にしようと、開発を進めてきたのである。もし、米国でGM鮭が承認されれば、世界的に流通圧力が強まる。GM作物で種子を制するものが作物を支配したように、漁業では受精卵を制するものが魚の世界を制する時代がやってきそうである。