■2015年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●現在進行中の日本のGM作物試験栽培


 1月9日、独立行政法人農業生物資源研究所(以下、生物研)は、4種類のGM稲の野外試験栽培を行なうと発表した。栽培するのは、昨年と同様「複合病害抵抗性稲」「開花期制御稲」「スギ花粉症治療稲」「スギ花粉症ペプチド含有稲(花粉症緩和稲)」。そのほか生物研では、害虫抵抗性タバコ(葉緑体形質転換タバコ)や、展示栽培として、除草剤耐性大豆、除草剤耐性と殺虫性の性質を併せ持つトウモロコシなど計8種類のGM作物の試験栽培を昨年に引き続き行なう。
 複合病害抵抗性稲は、いもち病など複数の病気への防御機能を活性化させる、「WAKY遺伝子」と呼ばれる稲から取り出した遺伝子を導入している。このWAKY遺伝子にスイッチを入れると、複数の遺伝子が活性化し、いもち病や白葉枯病に抵抗力を持たせることができるという。2013年度に野外試験栽培を開始し、翌2014年度は50平方メートルの水田に「日本晴」を4系統、320平方メートルの畑に「たちすがた」を4系統作付けした。今年は4月下旬から生物研と独立行政法人農業環境技術研究所(以下、農環研)の2か所で栽培される。

 開花期制御稲は、開花ホルモンに関連する遺伝子を導入し、一般に市販される薬剤(農薬の一種)を誘導剤にして遺伝子が働くようにしたものである。2013年度に野外栽培試験を開始、2014年度は15平方メートルの圃場に「日本晴」と「キタアオバ」を作付けし、今年は農環研で5月中旬から栽培される。
 スギ花粉症治療稲は、花粉症を引き起こす主要アレルゲンにかかわる遺伝子の構造を変えて導入したものである。2013年度に野外試験栽培を開始し、2014年度は20.8アールもの広い面積に、動物実験用試料確保を目的に作付けされた。品種には「コシヒカリ」が用いられている。今年は生物研で5月下旬から栽培される。

 以上の遺伝子組み換え稲は、2013年度から野外試験栽培が開始され、今年も隔離圃場で試験栽培が行なわれる。それ以前に開発され、試験栽培が続いているGM稲に「スギ花粉症ペプチド含有稲(花粉症緩和稲)」がある。同じ野外試験栽培だが、2014年度は一般圃場約15アールで試験栽培された。今年は、独立行政法人作物研究所で4月上旬から栽培される。この稲は、スギの花粉症を引き起こすアレルゲンの中の7種類のエピトープをつなげた遺伝子を導入したものである。エピトープとは、スギの花粉の中のアレルギーを引き起こす部分をさす。品種には「キタアケ」が用いられている。収穫された稲はこれまで、マウス、ラット、サルなどの動物実験で使用された。今年の試験栽培も、動物実験用の試料確保が目的であろう。