■2016年3月号

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バイオジャーナル

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●遺伝子組み換え作物
●植物の種子に直接遺伝子を導入する方法を開発

 独立行政法人・農業生物資源研究所は、ジェミニウイルス・ベクターを用いて、稲の種子胚に直接遺伝子を導入する方法を開発した。これまでは、種子に直接遺伝子を入れられないため、葉などの細胞に導入していた。生物資源研では、ゲノム編集技術やエピゲノム編集技術への応用を目的に、このウイルスベクターを用いて種子に直接遺伝子を導入する技術の研究・開発を進めている。

●3種類の除草剤に耐性を持つテンサイ

 米モンサント社と独KWS Saat社は共同で、グリホサート(除草剤ラウンドアップの主成分)、グルホシネート(除草剤バスタの主成分)、除草剤ジカンバの3種類の除草剤に耐性を持つテンサイを開発した。除草剤1種類では枯れないスーパー雑草対策として期待されている。今後3年間かけてテストされ、市場化を目指す。〔ISAAA 2016/1〕

●組み換え体ではない、エピゲノム編集ジャガイモ
 弘前大学農学生命科学部葛西厚史らの研究チームが取り組んでいる、エピゲノム編集技術を用いたジャガイモの内容が判明した。標的遺伝子を起動させるための遺伝子(プロモーター)の発現を抑えた植物をつくり出し、それを接ぎ木して遺伝子を抑える。目的は、加熱により生じる発癌物質アクリルアミドの低減化などだという。この技術では、ジャガイモそのものが組み換え体でないため、遺伝子組み換え作物規制法である「カルタヘナ法」や「食品衛生法」などの評価を免れる可能性が高い。
 
●GM汚染
●米国でGMアルファルファ汚染拡大

 米国農務省(USDA)の最新の調査で、GMアルファルファが野生化し、西部地域で拡大していることが明らかになった。アルファルファ栽培の盛んなカリフォルニア州、アイダホ州、ワシントン州を調査し、404の野生アルファルファの群生を見つけた。分析の結果27%がGMアルファルファだった。これまでUSDAは、GM農業、慣行農業、有機農業は共存できると言ってきたが、それが難しいことを示す結果となった。〔EcoWatch 2016/1/21〕
 
●ゲノム編集
●英国でゲノム編集技術で受精卵操作を計画

 英国ロンドンにあるフランシス・クリック研究所で、ゲノム編集技術を用いて、不妊治療を目的に人間の受精卵の遺伝子操作を行う計画が進められている。承認の是非をめぐり、ヒト受精と胚研究機関(HEFA)で議論が戦わされた。すでに中国・中山大学が不妊治療目的にゲノム編集技術で遺伝子を操作し(本誌2016年1月号参照)、倫理的に問題があるとして批判が強まっており、承認されるかどうか注目される。〔The Independent 2016/1/14〕
 
●企業動向
●中国国営企業がスイス・シンジェンタ社を買収へ

 中国の国営石油企業の中国化工集団公司(略称:中国化工、英語略称:Chem China)による、スイス・シンジェンタ社の買収が確実になった。シンジェンタ社は農薬の売上げ世界第1位、種子の売上げ第3位の多国籍企業である。昨年、農薬部門の強化を図るモンサント社が買収を提示、11月には中国加工が買収交渉していたが、両社とも締結はならなかった。しかし、12月のダウ・ケミカル社とデュポン社の経営統合を受け、再度中国加工とシンジェンタ社が協議していた。買収額は430億ドル(約5兆1600億円)で、中国企業としては最大規模の金額になる。〔Bloomberg 2016/2/3〕