■2016年6月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集技術の安全神話は単なるプロパガンダ


 科学者によるゲノム編集技術批判の論文が発表された。米国・生命科学資源プロジェクトの科学者ジョナサン・レイサムが「Independent Science News」誌4月25日号に寄せた論文によると、GMO推進派によってゲノム編集技術の安全神話が喧伝されているが、それには根拠がない。この技術はまだ始まったばかりでよくわかっていないにもかかわらず、あたかもすべてわかっているかのように喧伝されている。これは単なるプロパガンダだ、と指摘している。
第1に「ゲノム編集技術は間違いを起し難い」というが、CRISPRは目的のターゲット以外にも作用することがあり、異なる部位に対して突然変異を起こすことがある。つまり、他の部位のDNAを切断してしまう可能性がある。

第2に「ゲノム編集技術は精密に制御されている」というが、DNAはその機能がまだわかっていないことが多いため、後から問題が起こることがしばしばある。例えば、CaMV35Sプロモーターは遺伝子組み換え技術で一般的に用いられるが、小さなRNAを大量に生成するのは後に明らかになったもので、当初は考えもしなかった。
第3に「DNAの機能は変更が予測可能である」というが、エピジェネティックな変異も含めた遺伝子の機能は、年齢、環境、他の生物、遺伝子間のネットワークなど、さまざまな要因による影響を受けている。そのため予測は不可能である。〔Independent Science News 2016/4/25〕