■2016年6月号

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バイオジャーナル

ニュース



●遺伝子組み換え作物
●Bt毒素が非標的昆虫に悪影響を及ぼす

 Bt毒素を組み合わせて用いた時、標的ではない生物に害を与えることがわかった。殺虫性作物に用いられるBt毒素のCry1AbとCry2Aaを組み合わせて、濃度4.5ppmでミジンコに与えたところ、それぞれを単独で与えるよりも強い毒性を示し、高い死亡率をもたらした。ノルウェーの科学者トーマス・ボーンらによる研究で、「食品と化学毒性」誌(91号、2016年5月)に掲載された。〔Food and Chemical Toxicology, 2016 May, Vol.91〕

●GM汚染
●奈良先端大学院大学でGM植物大量拡散

 5月9日、奈良先端科学技術大学院大学キャンパス内で、アブラナ科のシロイヌナズナが生えているのを学生が見つけた。大学では約10の研究室が温室内でGMシロイヌナズナの試験栽培をしていた。調査したところ289株がGMシロイヌナズナだった。〔東京新聞 2016/5/10〕


●企業動向
●バイエルがモンサント買収を検討

 このところ中国国営企業がスイス・シンジェンタ社を買収したり、米デュポン社がダウ・ケミカル社との経営統合に合意したりというように、バイオ企業の再編が続いているが、ついにトップ企業買収の動きが明らかになった。5月12日、独バイエル社グループが、米モンサント社の買収を検討していることが判明した。買収額は400億ドルに達すると見られる。この報道を受けバイエル社の株価は下落、モンサント社の株価は上昇した。バイエル社の財政負担が大きいことへの投資家の懸念と見られる。この買収は規模が大きいことから、独占禁止法に抵触する可能性もある。〔Reuters 2016/5/19〕

●省庁動向
●日本でも受精卵の遺伝子操作容認

 4月22日に内閣府の有識者で構成される生命倫理専門調査会が、基礎研究に限定して、受精卵の遺伝子操作を容認する報告をまとめた。昨年、中国中山大学の研究者が、ゲノム編集技術を用いて人間の受精卵の遺伝子操作を行い、論文が科学誌に拒否されるなど、物議を醸した。それを契機に12月には20カ国の科学者が集まった国際会議が開かれ、結論として基礎研究に限定したものの受精卵操作を容認したことを受け、日本でも検討を行ってきた(本誌2016年1月号参照)。

●異種移植の臨床研究容認へ

 4月10日、厚労省の「異種移植の臨床研究の実施に関する安全性確保についての研究班」が、これまで事実上認めてこなかった異種移植について、ブタの膵島(ランゲルハンス島)に限り容認することになり、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」の改正案が厚労省審議会にかけられることになった。
対象は、1型糖尿病の患者に対する細胞移植である。1型糖尿病の人は、生涯にわたってインシュリンを注射しなければならないが、その負担が軽減されるとしている。異種移植の場合、人間同士の移植と異なり、移植してすぐに拒絶反応が起きるなど難しい問題が多い。さらにブタのDNAに内在するウイルスの遺伝子が人間に持ち込まれる危険性がある。前者については技術的に克服が可能であるとし、後者についてはその恐れがないという。