■2016年9月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●GM小麦開発撤退から10年、またも汚染発覚


 7月26日韓国政府は、アルゼンチンから輸入した小麦に除草剤耐性小麦が含まれていたとして、廃棄と積戻しを求めた。5月にアルゼンチンから出荷された7万2000トンの小麦に、モンサント社の「MON71800」が含まれていた。現在アルゼンチンを含め、いまだGM小麦は栽培されていない。なぜ混入したのか、2013年に起きたGM小麦汚染事件の二の舞になるのではと懸念されている。

2013年の汚染は、米国オレゴン州で、除草剤で枯れない小麦をGM小麦ではないかと疑った農家が、オレゴン州立大学の科学者に分析を依頼し、GM小麦「MON71800」であることが明らかになった。さらに農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)が追試して確認した。「MON71800」は、2005年には開発から撤退を表明し、栽培試験を終了している。

アルゼンチンでなぜ同じGM小麦が混入したのだろうか。その疑問への答えが出ないまま、新たな汚染が確認された。7月29日APHISは、ワシントン州の圃場で、モンサント社の除草剤耐性小麦「MON71700」の自生が確認されたと発表した。先に混入していたものとは別のものである。モンサント社によると、「71700」と「71800」は、挿入した遺伝子のゲノムの位置が異なるという。

日本はアルゼンチンから小麦を輸入していないため、韓国で発覚した混入事件では対応を図らなかったが、ワシントン州でのGM小麦自生を受けて、農水省は米国産小麦の輸入を一時停止した。「MON71700」の検査準備が出来次第、輸入は再開される。

モンサント社が除草剤耐性小麦の野外試験栽培を始めたのは1998年。2000年12月には米国環境保護局(EPA)に申請していた。「MON71700」の試験栽培は1998年から2000年で、終了から16年の歳月がたっている。

前回の汚染事件では、モンサント社は急遽「MON71800」の検査技術を日本、韓国、台湾、EUなどに提供し、輸入停止による影響を最小限に食い止めた。輸入は再開されたが、汚染の原因そのものは追及されなかった。当時、いったん栽培すると遺伝子汚染が起きるという事実に加え、安易に輸入を再開すれば、再び汚染・輸入停止という事態が起きかねないことが指摘されていた。
8月5日APHISはワシントン州の小麦を検査し、GM小麦は検出されなかったと報告した。それを受けて米農務省は、日本や韓国に早期輸入再開を求めている。〔Reuters 2016/7/26ほか〕