■2017年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース



●企業動向
●バイエル・モンサント両社がトランプ政権と協議
 
 トランプ政権による米国第一政策が、GMOの分野にも及び始めた。バイエル社による買収により、モンサント社の欧州への本社機能の移転などの可能性にトランプ新政権が懸念を示していたことから、両社のトップとトランプ政権との間で話し合いがもたれた。話し合いの結果、両社は米国での機能を維持、強化することを約束した。〔Chem.info 2017/1/20〕


●三井物産がモンサント社の農薬事業の一部を買収
 
 三井物産は1月16日、モンサント社の農薬事業の一部、小麦など麦用の種子消毒剤「ラティテュード」の製造や販売などの権利を100億円で買収すると発表した。この農薬はヨーロッパを中心に販売されている。GM小麦開発を優先するモンサント社は、バイエル社による買収以前から整理を進めており、この農薬は優先順位が低いと見られる。〔日経新聞 2017/1/6〕

●生物多様性条約
●COP13、新しいバイオの規制先送りに
 
 2016年12月にメキシコ・カンクンで、生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)、カルタヘナ議定書第8回締約国会議、名古屋議定書第2回締約国会議が開催され、新しいバイオテクノロジーに関する取り組みに動きがあった。まず、合成生物学を会議の議論に乗せることで合意された。合成生物学とは、生物を合成しながら生命の仕組みを解明していく学問で、この問題が提起されてから7年たっている。また、遺伝子情報をインターネット・クラウドで利用することに関しても、途上国の遺伝子資源への権利が脅かされる懸念があるとして取り組むことが合意された。そして、今会議で最も注目を集めた遺伝子ドライブ技術については、予防原則を適用することの必要性が合意された。
COP13では以上のような取り組みが合意されたが、一方で、具体的に検討を進めるためのリスクアセスメントの作業部会が解散した。今後、新たな作業部会が作られるが、長期間の空白が生じる。その間に技術利用が進み、既成事実が積み上げられていくことが懸念される。〔ETC Groupe 2016/12/19ほか〕


●「名古屋・クアラルンプール補足議定書」パブコメへの政府見解
 
 「名古屋・クアラルンプール補足議定書」批准に向けて、先に一般から募集した意見(パブリックコメント)に対し、12月26日、環境省中央環境審議会の自然環境部会が「名古屋・クアラルンプール補足議定書に対応した国内措置の在り方について」を答申した。公開されたパブコメへの回答では、「復元の対象に農作物も含めるべきだ」という意見に対して、「農作物まで拡大すべきでない」としている。また「人の健康も含めるべき」という意見に対しては、「生物多様性への影響が及ぼす間接的影響の範囲」と回答している。
*「名古屋・クアラルンプール補足議定書」は、生命操作生物から生物多様性を守るための「カルタヘナ議定書」27条の「責任と修復」に関する取り決めを定めるもの。この議定書は、日本が議長国だった2010年に採択されたもので、発効はしていない。日本は未批准。


●環境省が「名古屋議定書」批准に向けた指針まとめる
 
 環境省が「名古屋議定書」批准に向けて、「『遺伝資源の取得の機会及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)』に関する指針(案)」をまとめ、一般からの意見募集を開始した。メキシコで開催されたCOP13では、日本などまだ「名古屋議定書」を批准していない国に対して、批准を急ぐよう声明が出された。また国内の研究者からも、批准が遅れているため研究に支障が生じているという指摘が出ており、これまで業界に配慮して批准を遅らせてきた政府も、やっと批准に向けた動きをとり始めた。

*「名古屋議定書」は、生物多様性条約の目的である「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」の取り決めを定めるもの。この議定書は、日本が議長国だった2010年に採択された。前回のCOP12からすでに締約国会議が開始しているが、日本は未批准。