■2017年5月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●グリホサート残留基準の緩和と健康問題


 米国の市民団体「こども環境健康ネットワーク(CEHN)」は4月4日、除草剤ラウンドアップの主成分グリホサートが子どもにもたらす新たな健康被害に関する科学的知見を発表した。調査したのは、フランシスカン・セント・フランシス保健システムの新生児集中治療室や、インディアナ州インディアナポリスのライリー子ども病院に勤務する臨床小児科医ポール・ウィンチェスター率いる研究チーム。近年、米国中西部の農業地帯でグリホサートへの曝露が急速に強まっているため、調査が行われた。

調査対象はインディアナ州の妊婦で、69人中63人(91%)の尿から、平均3.44マイクログラム/リットルのグリホサートが検出された。2015年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の調査でも、市民の尿の93%から検出されている。

調査は2年間にわたって追跡。尿中のグリホサートの濃度が高かった妊婦の場合、妊娠期間が短く、子どもの体重が少ない傾向があった。ウィンチェスター医師によると、その子は将来的に糖尿病、高血圧、心臓病、認知能力の低下、メタボリック・シンドロームになるリスクがあると指摘している。〔The FERN 2017/4/7〕


1974年に市場に登場したグリホサートは、世界中の畑、芝生、庭園に940万トン散布され、日本でも最も使用されている農薬である。使用拡大にともない世界中で健康被害の報告が相次ぐなか、3月22日に開催された厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会、農薬・動物医薬品部会では、グリホサートの残留基準緩和案が示された。

貿易自由化・促進を目的に世界貿易機関(WTO)の基準に合わせたもので、現行の残留基準が大幅に緩和される。小麦は5ppmから30ppmへ、以下大麦(20→30)、ライ麦(0.2→30)、そば(0.2→30)、小豆類(2→10)となっている。日本では栽培されていないものの、遺伝子組み換え品種が承認されているトウモロコシは1ppmから5ppmに、テンサイ(0.2→15)、綿実(10→40)、ナタネ(10→30)と大幅な緩和案が提示された。

米国では農務省が環境保護局(EPA)と食品医薬品局(FDA)と共同で、4〜8月に異性化糖のグリホサート残留検査を進めることを明らかにしていたが、検体を購入し、グリホサートと代謝産物アミノメチルホスホン酸の残留検査の準備が整っていたにもかかわらず、ひそかに中止していたことが、農務省スポークスマンが「この計画は変更された」と述べたことにより明らかになった。
〔Huffington Post 2017/3/23〕