市民バイオテクノロジー情報室〜バイオジャーナル

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■2003年4月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
米国EPAが根きり虫対策トウモロコシを承認

 米EPA(環境保護局)は、2月25日、トウモロコシの害虫である根きり虫を殺す毒素(Cry3Bb)をつくる遺伝子を組み込んだ、新しい遺伝子組み換えトウモロコシを承認した。このGMトウモロコシは、モンサント社が開発し、すでに米FDA(食品医薬品局)や日本の厚生労働省が食品として認可しているが、作付けた際の環境への影響が問題となり、EPAでの審議が続いていた。

 問題となったのは、このGMトウモロコシの毒素タンパク質の発現量が多いため、標的以外の害虫への影響が心配されることに加えて、耐性を持った害虫が広がりやすい点にあった。EPAの科学アドバイザーは、GMトウモロコシの作付け地に、非組み換えトウモロコシを50%以上栽培し、害虫の逃げ場をつくることを求めた。それに対してモンサント社は、それではメリットがなくなるため、20%以上を主張した。結局、EPAが折れ、20%で決着した。 〔ワシントンポスト 2003/2/16〕

ウイルス抵抗性パパイアでアレルギーの可能性

 厚生労働省は、コーネル大学、ハワイ大学、アップジョン社が共同開発した、ウイルス抵抗性パパイア「レインボー」の食品安全審査を行っている。1999年に申請が出されてから3年が経ち、認可される可能性が強まっていることは、先に報告した(本誌2003年2月号)。このパパイアには、パパイア・リングスポット・ウイルスの被覆タンパク質をつくる遺伝子が導入されているが、最近、この被覆タンパク質にアレルゲンとなるアミノ酸配列があることが分かった。最初の生食用の遺伝子組み換え作物となる、このパパイアが認可されれば、アレルギー性疾患の拡大をも招く可能性がある。 〔ISIS 2003/2/3〕

GM作物の効力は長続きしない

 米ニューヨーク・タイムズ紙が、遺伝子組み換え作物に懐疑的な記者報告を掲載している。
 農薬は長期間同一のものを使用していると効力が低下するため別の農薬を使わなければならなくなるが、除草剤耐性作物に用いられているモンサント社の除草剤ラウンドアップもまた効力が落ちはじめ、ラウンドアップに対して耐性をもつ2種類の雑草が広がり始めたため、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え作物の効力が失われている。さらに、Bt毒素を用いた害虫抵抗性作物もまた、作付け面積の拡大とともに耐性をもった害虫が増えつつあり、近いうちに効力が低下することが考えられる、としている。
〔ニューヨーク・タイムズ 2003/2/19〕

米国内でのGM作物作付け割合増加

 ロイターが行ったアンケート調査によると、2002年の全米での遺伝子組み換え作物の作付け割合は、以前のような高い伸び率ではないが、2.3%増加していることが分かった。また、米農務省の発表では、昨年のGMトウモロコシの作付け割合は34%、GM大豆の作付け割合は75%、GM綿の作付け割合は71%に達している。
〔ロイター 2003/1/22〕

●海外動向
米国の消費者団体がFDAに意見書

 米消費者団体の公益科学センター(CSPI)は、1月7日、「遺伝子組み換え作物の安全性評価のための事前協議システム」に関して、全体的には遺伝子組み換え食品の有効性を評価しながらも、不備を指摘する報告書をFDA(食品医薬品局)に提出した。
 追加情報の提供を拒否した企業のケース、データの要約に間違いがあるにもかかわらずFDAが指摘しなかったケース、潜在的な有害性やアレルギーに関する評価が適切な方法で行われなかったケースなど、いくつかの問題点を指摘している。その上で、厳格な評価、市民参加、新たな疑念が生じた際の再評価の実施、などを求めている。 〔農水省ホームページ2003/1/14〕

英国環境大臣が遺伝子汚染問題に言及

 マイケル・ミーチャー英環境大臣は、有機農業の農家が遺伝子組み換え作物の花粉飛来によって経済的な損失を受けた場合、補償を受ける権利があると述べた。現在はそのような補償の仕組みがないため、法律の変更を検討していること、また、他家受粉の遺伝子組み換え作物を制限するための分離地帯設置も検討している、と述べている。現在のブレア政権が遺伝子組み換え作物推進の立場をとっているため、同大臣の見解が今後どのように扱われるかは不透明である。 〔ガーディアン 2003/2/20〕

●遺伝子組み換え魚
遺伝子組み換え魚の市場化近し


 米ワシントンを拠点に活動している非営利団体Pew Initiative on Food and Biotechnologyによると、成長を早めるために野生のチヌーク・サーモンの遺伝子を組み込んだアトランティック・サーモンの商用養殖の認可に向けてFDAが動き始め、さらに各地の研究所では、14種類の遺伝子組み換え魚の研究が進められている。このように遺伝子組み換え魚の実用化に向けた動きが加速する一方で、安全性を確保するための法的規制は整備されていない。同団体は、十分な管理体制が構築されないまま開発が進む危険性を訴えている。
〔Pew Initiative on Food and Biotechnology 2003/1/14〕