■2017年9月号

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バイオジャーナル

ニュース



●GM魚
●GM鮭、すでにカナダで4.5トンが出荷済

 アクアバウンティ・テクノロジーズ社(以下、アクア社)は、8月4日発表の第2四半期の財務報告で、今年1〜6月のGM鮭出荷量が4.5トンに達したと報告した。カナダ・プリンスエドワード島にある施設でGM鮭の受精卵を生産し、パナマで養殖した養殖鮭がカナダの市場に出回ったものと思われる。カナダでは2016年5月に承認され、表示がなくても流通・販売できるため、消費者は知らないうちに食べていたことになる。

一方、米国では2015年11月に食品医薬品局(FDA)が承認したものの、表示制度が未定であることから、流通・販売ができないままでいる。しかし、カナダで加工された鮭が流入してもチェック機能がないため、販売されている可能性は否定できない。これは日本も同様で、すでに入っていてもわからない。

アクア社は今年6月にプリンスエドワード島での養殖の承認を得ており、今後カナダでの養殖が本格化するため、さらに出荷量は増えるものと思われる。また米国でも、インディアナ州にある養殖施設を購入し、表示制度ができるのを待って本格的な販売を計画している。アクア社はその時期を2019年と見ており、米加で本格的な販売が始まれば世界中に販売が拡大していくものと思われる。〔The Washington Post 2017/8/4〕


●北米事情
●ジカンバの被害、米国全土で100万haに

 米国では除草剤ジカンバ耐性作物の栽培が広がり、その被害は米国全土で250万エーカー(約100万ヘクタール)に達していることが、ミズーリ大学の雑草の研究者の調査により明らかになった。アーカンソー州で85万エーカー、ミズーリ、イリノイ州ではそれぞれ30万エーカー、その他の州の被害を加えると250万エーカーに達し、約1400の苦情がミズーリ州の担当局に寄せられているという。〔High Plains Public Radio 2017/7/26〕

ジカンバ被害が拡大した原因の1つに、この農薬を構成するすべての物質に揮発性があることがあげられている。アーカンソー大学の研究者によると、揮発の度合いに差はあるものの、使用後36時間は揮発し続け、大気中を移動している、と指摘している。〔AgFax 2017/8/10〕


●GM表示をめぐりキャンベルスープが業界団体脱退へ

 すべての食品にGM食品表示を行うことを宣言したキャンベルスープが、今年いっぱいで全米食品製造業者協会(GMA:Grocery Manufacturers Association)からの脱退を決めた。GMAがGM食品表示に否定的な姿勢をとり続けていることが、その理由である。キャンベルスープの姿勢に対して、多くの消費者が支持を寄せている。〔Politico 2017/7/21〕


●米国のGM作物栽培状況

 米国農務省経済調査局(USDA ERS)がGM作物の現状を発表した。GM大豆は全大豆の94%、GM綿は同69%、GMトウモロコシは同92%に達したという。GM大豆はすべて除草剤耐性、綿とトウモロコシは除草剤耐性と殺虫性を組み合わせたものである。〔ISAAA 2017/7〕


●アイスクリームからグリホサート検出

 米国有機消費者協会が、バーモント州のアイスクリーム・メーカーBen & Jerry’sのアイスクリーム11個を調べたところ、10個からグリホサートが検出された。原料はすべて、飼料を含め遺伝子組み換えではないものを用いている。そのため本来は検出されないはずである。検出レベルはすべて、環境保護局(EPA)の設定した残留基準を下回っていたが、同協会は「グリホサートの汚染が予想以上に拡大していることを示すものだ」と指摘している。〔The New York Times 2017/7/25〕


●モンサント社の報道・科学研究機関への圧力明るみに

 米国市民がモンサント社を訴えた裁判で、除草剤ラウンドアップの安全性について、同社が報道機関や科学研究の現場に影響力を行使したEメールの存在が明るみに出た。メールには「フォーブス」誌への圧力、学術研究の発表への圧力が記載されていた。〔The New York Times 2017/8/1〕
「フォーブス」誌に掲載された、スタンフォード大学フーバー研究所のヘンリー・I・ミラーの論文は、モンサント社がゴーストライターに書かせたものであった。実際にはミラーは、数語を書き加えたに過ぎなかった。〔CBS SF Bay Area 2017/8/4〕

●GM白クローバーの野外試験始まる

 米国ウイスコンシン州でまもなく、GM白クローバーの野外試験が始まる。フォーリッジ・ジェネティクス社が開発したこのクローバーは、濃縮されたタンニンを作る遺伝子を導入している。この遺伝子を導入することで、タンパク質の使用効率が改善され、窒素の環境中への放出を抑え、放牧の選択の幅を広げる、と同社は述べている。しかし、農務省農業研究局の研究者ジョーン・グラバーは、濃縮されたタンニンはタンパク質と結合して消化を早めるので、牛のタンパク質吸収は改善されないし、濃縮タンニンが多すぎると逆にタンパク質の消化を妨げる、と述べている。〔Capital Press 2017/8/16〕