■2017年9月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース



●アジア事情
●インド、GMマスタードの認可問題大詰め迎える
 
 インド政府は、市民団体が提訴したGMマスタードの承認差し止め裁判で、最高裁は9月には判断を示すだろう、という見通しを述べた。10月には種まきのシーズンが始まるため、9月が限度とみられている。〔Live Mint 2017/7/31〕
最高裁は政府に対して、GMマスタードが他の作物に与える影響について、科学的・技術的な評価を行なった文書の提出を求めている。〔India Legal 2017/7/24〕

一方、インドの医師34人が連名で、GMマスタードの商業栽培を許可しないよう、ナレンドラ・モディ首相に手紙を送付した。インドでは初の食用GM作物であることから、人々の健康へのリスクが高い、と指摘している。〔First Post 2017/7/30〕

●オセアニア事情
●豪州政府がGM小麦と大麦の野外試験承認
 
 オーストラリア遺伝子技術規制局が、GM小麦と大麦の隔離圃場での野外試験を承認した。これらの作物は、GM技術で非生物学的ストレス耐性と収量増の性質をもたらすものである。南オーストラリア州など3州5か所での実施が認められた。〔ISAAA 2017/7〕

●遺伝子組み換え作物
●豪州でGMバナナ開発
 
 オーストラリアのクインズランド州クインズランド工科大学の研究者がビタミンAを増やしたGMゴールデンバナナを開発した。クインズランド州の品種の他に、東アフリカの品種などさまざまな品種を用いて実験を行なっている。〔ISAAA 2017/7〕

●GMO汚染
●米国産食品から未承認イネ検出
 
 厚労省は8月10日、アリエルトレーディング社が米国より輸入した植物性タンパクから未承認のBtイネが検出され、廃棄あるいは積み戻しを指示したと発表した。これまでBtイネは、中国産米加工食品から検出されたことはあるが、米国産は初めてである。この食品の原料は、中国産米の可能性があると考えられる。

●省庁動向
●RNA干渉ジャガイモ承認
 
 厚労省は7月20日、新しい遺伝子操作作物の「RNA干渉ジャガイモ」を安全と評価し、食品として流通することを承認した。このジャガイモは、RNA干渉法で遺伝子の働きを壊し、発癌物質のアクリルアミドを低減するとともに、打撲により黒く変色するのを抑える。米国J.R.シンプロット社が開発し、すでに米国では栽培され、流通している。
カルタヘナ法に基づく生物多様性への影響評価は行われていないため、国内での栽培を目指したものではない。輸入を対象に、ファーストフード店などでフライドポテトとして使用される可能性が大きい。
7月27日には農水省が飼料としての使用を承認した。ジャガイモを飼料に直接使用することは考えられないことから、食品の余りが飼料に回された際のことを想定してのものと思われる。


●青いキク誕生
 
 農水省所管の農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)野菜花卉研究部門とサントリーグローバルイノベーションセンターが共同で、青いキクを開発した。当初はカンパニュラの色素遺伝子を導入したが、紫に近かった。そこで青いチョウマメの色素遺伝子を一緒に働かせることで誕生させたという。

●国際条約
●名古屋議定書批准
 
 2017年8月20日、日本は名古屋議定書を批准し、国内措置の「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(ABS指針)」が施行された。これにより海外から遺伝資源を取得した場合は、環境大臣への報告義務が生じる。
●ゲノム編集
●ゲノム編集で異種移植への壁を1つクリア
 
 米国ハーバード大学の研究チームが、ゲノム編集を用いてブタに内在しているウイルス遺伝子をすべて破壊したと「サイエンス」誌(2017年8月10日)に発表した。実験を行なったのはGeorge Churchらの研究チームとデンマークや中国の研究者。異種移植での最大の問題が動物に内在するウイルスの人への感染と拒絶反応にあるが、もし成功したのであれば、その1つの壁をクリアしたことになる。破壊したのはブタ内在性レトロウイルスである。〔AFP 2017/8/11〕