■2017年11月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集技術食品規制をめぐる欧州の動き


 9月28日、「社会と環境への責任をもつ欧州科学者ネットワーク(ENSSER)」が、60人を超える科学者の署名とともに、新しいバイオテクノロジーを応用した食品に対して警鐘を鳴らす声明を発表した。EUで規制を検討中の新しいバイオテクノロジー応用食品の対象は、「新植物育種技術(NPBT)」と呼ばれるゲノム編集など8種類(人工ヌクレアーゼを利用したゲノム編集、オリゴヌクレオチド指定突然変異導入技術、シスジェネシス・イントラジェネシス、RNA依存性DNAメチル化、接ぎ木と遺伝子組み換え技術の組み合わせ、逆育種、アグロフィルトレーション、合成生物)である。

声明では、これらの技術を応用した食品は、食の安全面で問題があると同時に、生態系に悪影響が出る可能性があり、厳格に規制すべきであると述べている。とくにゲノム編集は、目的とする遺伝子以外のDNAを切断してしまう「オフターゲット」を防ぐことは困難であり、時には生命体にとって大事な遺伝子の働きを破壊してしまう。オフターゲットは予想外の毒性やアレルギーを引き起こす。ゲノム編集は「バイオテロ」をもたらし、ゲノム編集を応用した遺伝子ドライブは生態系を破壊する。これらの可能性に対し、GM技術と同様の厳格な規制を行うべきだと指摘している。

いまこの声明が出されたのは、欧州でも「新しいバイオテクノロジーを応用した食品はGM食品とは異なる」として、規制を免れようとする動きがあるからである。加えて声明では、すべての消費者や農家が選択できるように、トレーサビリティと食品表示を義務づけるべきだと提言している。〔ENSSER 2017/9/28〕



欧州の国際有機農業運動連盟(IFOAM EU)も欧州委員会に対し、ゲノム編集などの「新植物育種技術」について、従来のGM食品同様、環境アセスメント、事前承認、トレーサビリティ、食品表示などの規制を行うよう求めた。でなければ「有機農業がGMOフリーであるという原則が守られなくなる」と指摘している。〔IFOAM EU 2017/10/2〕



新植物育種技術の検査方法をめぐっても論争が起きている。科学者グループが検査方法の開発を行うよう促しているにもかかわらず、欧州委員会が拒否したのである。従来のGM技術の場合、導入したDNAの共通部分を見ることで、遺伝子組み換えを行ったかどうか判定できる。しかしゲノム編集やRNA干渉法でDNAを切断したものは検査が難しく、分子レベルでの変化を見る必要が出てくる。その方法の開発を提言したのである。〔InfOGM 2017/10/5〕