■2018年3月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●国産初のGMトマトの安全審査開始


 2017年12月22日、食品安全委員会の遺伝子組換え食品等専門調査会は、国産初のGM食品であるトマトの安全審査を開始した。このGMトマトは、トマト自体ではなく、トマトを用いて生産した「ミラクリン」を食べる。ミラクリンは、アフリカ原産アカテツ科の低木の実ミラクルフルーツに含まれる酸味を甘味に感じさせる糖タンパク質である。このような作用を甘味誘導作用という。この成分を食品に添加すると糖の摂取が抑えられるため、健康食品などへの応用を目的としている。日本ではミラクルフルーツの栽培が難しいため、トマトに生産させることになったという。トマトは閉鎖系の植物工場で栽培する予定。開発したのは江面浩ら筑波大学の研究チームで、これまで植物工場に適したトマトの開発や、効率の良いミラクリン製造法の開発を進めてきた。


植物工場という閉鎖系で栽培しても野外への拡散は想定されるため、生物多様性影響評価は必要である。昨年11月筑波大学は、株式会社インプランタイノベーションズと共同で隔離圃場での生物多様性影響評価を申請、審査が始まっている。インプランタイノベーションズは理化学研究所関連の植物受託研究会社である。トマトを含むナス科の植物は日本で多く栽培され、関連農作物との交雑の可能性は高く、影響評価は慎重になされるものと思われる。


では、食品の安全性でどのような問題点があるのか。第一に、ミラクルフルーツとトマトでは、ミラクリンは同じではないはずである。第二に、ミラクリンを大量に含むトマトが誕生することから、明らかに実質的同等の考え方は通用しない。第三に、導入した遺伝子やミラクリンを大量に含むことで、トマトに意図しない変化が起きる可能性が高い。そのため、これまで以上に慎重な審査が求められる。