■2018年5月号

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バイオジャーナル

ニュース



●GMO汚染
●メキシコの主食トルティーヤの深刻なGMO汚染

 メキシコの主食であるトルティーヤが、GMOやグリホサートに汚染されていることが明らかになった。メキシコでは原料のトウモロコシの大半を米国から輸入している。調査を行なったのは、メキシコ国立自治大学(UNAM)とメトロポリタナ自治大学(UAM)の研究チームで、トルティーヤの原料の90.4%からGM遺伝子が、3分の1からグリホサートが検出された。〔GRAIN 2018/3/20〕
●遺伝子組み換え作物
●グリホサートがミツバチの行動に影響を及ぼす

 除草剤耐性GM作物栽培に使用される除草剤グリホサートが、ミツバチの脳・神経系に影響を及ぼすことが明らかになった。アルゼンチンのブエノスアイレス大学の研究者Carolina GonalonsとWalter M.Farinaによる研究で、「Journal of Experimental Biology」誌に発表された。これまでミツバチへの影響はネオニコチノイド系殺虫剤が問題視されていたが、グリホサートでも同様の影響があることがわかった。グリホサートに曝された働きバチは、脳・神経系に障害を受け、味覚と記憶の両方に影響が起きていた。この研究は、曝露量と曝露期間をいくつかのパターンにして行われた。味覚への影響では、ショ糖反応性が低下し、食欲が減退した。研究者は、このままグリホサートを使用すると、ハチのコロニーが崩壊する、と警告している。〔Journal of Experimental Biology 2018/4/11〕


●除草剤ジカンバが蝶の絶滅を加速させる

 除草剤耐性作物栽培で、より強力な除草剤ジカンバの使用により、貴重な蝶のオオカバマダラの絶滅危機が迫っている、と環境保護団体の生物多様性センターが警告を発した。センターによると、この2年間で8割減少し、もはや絶滅寸前だという。〔Patch.com 2018/3/8〕


●ゲノム編集
●米農務省、ゲノム編集技術は規制せず

 米国農務省は3月28日、ゲノム編集技術で開発された作物を規制の対象としない、と発表した。理由として、従来の育種技術で開発された作物と区別できないため、と述べている。しかし、オフターゲットなど予測できない突然変異をどのように評価するなどは示されていない。〔USDA Press 2018/3/28〕
その直後の4月5日、同省は繊維分を増やすようゲノム編集で改造された小麦について、GMOではないので規制の必要はなく、そのため評価の必要もないと発表した。カリクスト社が開発したこの小麦は、2016年のウドンコ病抵抗性小麦に続く2種類目のゲノム編集小麦。〔Capital Press 2018/4/5〕


●豪州・ニュージーランドもゲノム編集規制せず

 オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が、この間行われた新しいバイオテクノロジーに関する議事録を公表し、ゲノム編集など最新技術については規制しない意向を示した。まだ正式な決定ではないものの、米国に続き両国が規制しないと決定すれば、規制の対象としない流れが世界的に加速しそうである。〔FSANZ 2018/3/26〕


●省庁動向
●ノボキニン蓄積稲、野外での試験栽培へ


 3月29日、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したGM稲の生物多様性影響評価に関して、一般からの意見募集が始まった。対象稲は、隔離圃場での野外試験を計画しているノボキニン蓄積稲と、高機能隔離圃場での野外試験を計画しているシンク能改変稲。シンク能改変稲はゲノム編集技術で開発した。

ノボキニン蓄積稲は「グルテリンプロモーター誘導型nfGluA2蓄積稲」といい、ノボキニン・ペプチドをお米の可食部である胚乳に蓄積させるように遺伝子を組み換えたもの。ノボキニン・ペプチドは動脈硬化、血圧降下作用が知られている。グルテリン(Glu)は、お米の胚乳に含まれエネルギー源となるタンパク質。プロモーター(遺伝子を起動する遺伝子)が働かせる遺伝子が、鶏の卵白アルブミン由来の「ノボキニン・ペプチド遺伝子」である。ペプチドとはタンパク質を小さくしたものである。プロモーターにもターミネーター(遺伝子の稼働を終了させる遺伝子)にもイネ由来遺伝子が用いられているが、マーカー遺伝子(遺伝子組み換えがうまくいったかどうかを見る遺伝子)には除草剤スルホニルウレア系除草剤耐性遺伝子が用いられている。