■2018年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●バイエルによるモンサント買収終了


 5月29日米国司法省は、独BASFへの一部事業の売却を条件に、独バイエル社による米モンサント社の買収を承認した。米国がEUと同じ条件で承認したため、この買収を阻む壁はなくなった。これを受けて6月7日、モンサント社はバイエル社による買収が終了したと発表し、概略次のように述べた。今後、ニューヨーク証券取引所で株式が取引されることはなくなり、バイエル社がモンサント社の唯一の所有者となる。モンサント社の株主に対しては1株当たり128ドル(約1万4000円)が支払われる。JPモルガンは会社史上最大の買収額を支払い、バイエル社を援助した。統合はBASF社への一部事業売却後に、直ちに可能となる。この統合プロセスは約2か月以内を見込んでいる。

バイエル社のCEOヴェルナー・バウマンはモンサント社の名前を捨てることを表明し、バイエルの社名はそのままである、と述べた。しかしCEOはまた、モンサント社の手法は必要だ、とも述べている。

これにより世界のアグリビジネスは、モンサント・バイエル連合、デュポン・ダウ連合、中国化工集団公司・シンジェンタ連合、そしてバイエルから事業の一部を購入するBASFの4社による寡占状況となった。もともとバイエルとBASFは、戦前の軍需企業IGファルベンから分かれた企業である。モンサントを吸収して巨大化したバイエルについて、ヨーロッパでは再びナチス時代の戦争責任問題が浮上している。〔AFP 2018/6/4など〕


バイエルは、第一次世界大戦時に毒ガス兵器の塩素ガスの製造にかかわり、1925年に化学兵器開発を共同で行ってきたBASF社などと巨大化学企業IGファルベンを設立した。IGファルベンは第二次世界大戦時にヨーロッパで使用された爆薬すべてを製造し、ナチス占領下の化学企業を吸収していった。しかも工場や鉱山で働く労働力には、捕虜やユダヤ人、囚人などを奴隷のように使役した。その代表がアウシュビッツに作られた大規模な工場である。そこでは1944年には8万3000人以上の強制収容された人々が働いていた。

ナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いたニュールンベルク法廷は、IGファルベンなくして第二次世界大戦は不可能だったと結論づけた。しかし、同社役員に下された刑は驚くほど軽かった。そして戦後IGファルベンはバイエル、BASFなどに分かれ、企業活動を再開した。その後もバイエルは戦後史最大の企業犯罪、血液製剤による血友病患者へのHIV(エイズウイルス)感染をもたらした。しかも、安全な製剤の発売が可能になった後も、汚染製剤をアジアや中南米に輸出し続けた。そしていま、モンサント買収により遺伝子組み換え企業として、世界中の種子を支配し、環境や食の安全を脅かしている。