■2018年7月号

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バイオジャーナル

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●ゲノム編集
●ゲノム編集で癌を引き起こす可能性

ゲノム編集技術でCRISPR-Cas9を用いると、癌抑制遺伝子の1つp53遺伝子の活性を阻害することが明らかになった。そのため、ゲノム編集で細胞を操作すると癌を引き起こす可能性があり、そのメカニズムの解明が必要となる。このCRISPR-Cas9とp53との関連について、2018年6月11日Nature Medicine誌オンライン版は、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJussi Taipaleらと、米ノバルティス社のAjamete Kaykasらの、それぞれの論文を掲載した。両者は異なるヒト細胞(網膜細胞、多能性幹細胞)を使用して、同じ現象を確認した。ノバルティス社の研究チームはCRISPR-Cas9の編集効率を向上させるための研究を進めていた。基本的にはp53の活性を阻害することでゲノム編集の効率の向上を可能にしている、という。〔STS News 2018/6/11〕


●北米事情
●カナダで未承認GM小麦の自生見つかる

カナダ食品検査局(CFIA)は6月14日、アルバータ州でモンサントのGM小麦(MON71200)の自生を確認したと発表した。農道付近で除草剤散布後も生育していた。今年1月に見つかり、4月には同定されている。現在、GM小麦は世界中どこの国も承認しておらず、カナダでも違法栽培になる。CFIAは、以前モンサントが行っていた試験栽培地から300kmも離れており、なぜ自生したのか不明だという。これまでGM小麦の自生が見つかった米国でも、原因は不明のままである。
これを受けて日本政府は、カナダからの小麦輸入を停止し、輸入済みの分の引き渡しも停止した。韓国政府もまた、カナダ産小麦の販売を中止した。韓国食品医薬品安全局は、GM小麦を含まないと確認されたもののみ販売を許可すると述べている。〔Reuters 2018/6/15ほか〕


●FDAがゴールデンライスは栄養学上利益なしと指摘
ゴールデンライスについて米国の食品医薬品局(FDA)は、栄養学上の利益がない、と開発者の国際稲研究所(IRRI)に通告し、その書簡が5月25日に公表された。このGM稲は、すでにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが輸入を承認しており、米国FDAの出方が注目されていた。書簡では、ベータカロチンを増やした第二世代のゴールデンライス(GR2E)についてもベータカロチンの濃度が低すぎ、栄養成分の含有量として保証できないとしている。環境保護団体のグリーンピースは、必要な量を摂取するには1日3.75kgのゴールデンライスを食べなければならない、と指摘した。ご飯一杯は約150gで、1日25杯という計算になる。〔Independent Science News 2018/6/3〕

●ハワイ州で農薬規制法成立

ハワイ州はGM作物の試験栽培が集中し、多種類の農薬を大量に散布するため子どもたちへの健康被害が広がっている。6月13日ハワイ州知事は、州議会両議院が満場一致で通過させた農薬規制法案に署名し成立させた。これにより同州で試験栽培を行なうGM企業は、年に一度、「いつ、どこで、どんな種類の農薬を散布するか」を明らかにすることが義務づけられた。同法はまた、授業時間中に学校の100フィート(約30メートル)以内での農薬散布を禁止している。〔Live Science 2018/6/15〕