■2018年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集の日本での規制はどうなるのか



 7月11日、環境省中央環境審議会自然環境部会の遺伝子組換え生物等専門委員会が開催され、「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」の設置が決まり、議論の方向性が定まった。最大のポイントは、ゲノム編集技術がカルタヘナ法による規制の対象となるか否かを決める概念の整理である。

環境省が示した概念では、ゲノム編集技術をSDN1から3の3種類に分けている。SDN1は現在最も広がっているDNAを切断するだけの編集技術で、これに関しては人工ヌクレアーゼ(DNA切断酵素)に核酸(ガイドRNAなど)を含むケースも含まないケースも規制の対象外とした。SDN2は切断した箇所にいくつかの塩基を挿入し、人工ヌクレアーゼに核酸を含まないケースだが、これについては規制の対象とした。SDN3は切断した箇所に遺伝子を挿入するケースで、人工ヌクレアーゼに核酸を含んでおり、これも規制の対象とした。このように、切断箇所に何も挿入しない場合は規制の対象外で、挿入した場合は規制の対象とする、という方向で検討が行われる。

遺伝子組み換え技術の規制で、対象から外されたセルフクローニングやナチュラルオカレンスは、ゲノム編集でも規制の対象外とされた。セルフクローニングは同じ生物種の遺伝子だけを用いて遺伝子組み換えを行うが、ナチュラルオカレンスは自然界でも起き得る遺伝子組み換えである。ゲノム編集で問題になっているオフターゲットやモザイクなどの問題は、検討会での審議に委ねられる。

同時に検討会の委員が決定した。座長には大澤良筑波大学教授が選任され、委員には、広島大学大学院教授山本卓・日本ゲノム編集学会会長など、すべてこの分野の研究者で構成され、環境問題の専門家や社会科学者、法律家など、規制を提言する可能性のある人は最初から除外されている。これでは規制を免れる方向で議論が進むことは容易に想像がつく。

政府は6月に「統合イノベーション戦略」を閣議決定したが、その中で、ゲノム編集で作成した生物に対するカルタヘナ法、食品衛生法による規制に関して、今年度中に明確化することを求めている。そのため、環境省によるカルタヘナ法の検討と並行して、まもなく厚労省でも食品としての安全性に関する検討会が設置される。環境省による議論が大きく影響することは確実である。