■2018年9月号

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バイオジャーナル

ニュース



●北米事情
●グリホサートによる健康被害でモンサント社敗訴

 8月10日、カリフォルニア州のサンフランシスコ地裁は、がんになった原因は農薬ラウンドアップの主成分グリホサートによるものだとモンサント社を訴えていた末期がんの被害者に、2億8900万ドル(約320億円)を支払うよう命じた。
この内2億5000万ドルは、同社に悪意があったとする懲罰的損害賠償金である。原告のドウェイン・ジョンソンは、2012年から同州ベニシアにある校庭の除草の際にラウンドアップの業務用製品「レンジャープロ」のジェネリック製品を繰り返し使用していた。
その結果、非ホジキンリンパ腫になったと主張し訴えていた。非ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の1つで、主治医は、原告は2020年までは生きられないのではないかと述べている。
そのため陪審員は判決を急いだものとみられる。ジョンソンさんの弁護団の一人、故ロバート・ケネディ元司法長官の息子にあたるロバート・ケネディ・ジュニアは「この判決をきっかけに新たな訴訟が提起されるだろう」と述べている。モンサント社は上訴すると声明を出した。〔AFP 2018/8/11〕


●トランプ政権が野生生物保護地域でのGMO栽培禁止を解除

 トランプ政権は、オバマ政権時代の2014年7月に決定した、野生生物保護地域でのGM作物栽培禁止とネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止を解除した。自然保護団体は、環境政策の大幅後退であり、野生動物の避難所を奪うものだと強く批判している。〔The Guardian 2018/8/4〕


●米国のGM食品表示法案、期限まで議会提出せず

 米国の消費者団体食品安全センターは、議会提出期限を迎えてもGM食品情報開示法案を提出しなかったことから、農務省(USDA)を相手取って連邦裁判所に訴えた。このGM食品情報開示法は2年前にオバマ政権で成立し、7月29日が期限であった。昨年、食品安全センターは、QRコードでの表示について批判的な研究を公開しなかったためUSDAを訴えていた。この研究では、農村部、少数民族、高齢者、貧困層などの多くが情報にアクセスできないことが示されていた。〔Center for Food Safety 2018/8/1〕
●遺伝子組み換え作物
●ブラジルで母乳の8割からグリホサート検出

 ブラジル北東部ピアウイ州の州都から450キロ離れた地方都市ウルカイにあるジルカール地域病院産科で得られた母乳を、ピアウイ連邦大学健康科学センターが分析したところ、83.4%からグリホサートおよびその代謝産物であるアミノメチルホスホン酸(AMPA)が検出された。この地域はブラジル有数の大豆生産地である。〔Telesur 2018/8/9〕
このところのグリホサートの発癌性をめぐる動きを受けて、ブラジル連邦裁判所は8月6日、グリホサートの承認登録を30日以内に停止し、政府による毒性の再評価を求めた。ブラジルでは栽培大豆の約90%がモンサントの除草剤耐性大豆で、その影響は大きい。〔Reuters 2018/8/6〕


●グリホサートが妊婦や子孫に影響

 安全だといわれる濃度のグリホサート系除草剤に曝露した妊娠中の雌ラットが、受精能力を損ない、加えて孫の代には異常発達した四肢や成長遅滞などの障害を誘発していた。実験を行ったのはアルゼンチン・リトタル国立大学のマリア・M・ミレシ(Maria.M.Milesi)らの研究チームで、「毒物学アーカーブス(Archives of Toxicology)」誌(2018/6/9)に発表された。それによるとグリホサート系除草剤を1日に体重1kg当たり2mgと同200mgを食事とともに妊娠期間9日間から離乳まで与えた。その結果、子の数が減少し、孫の世代には先天性の四肢障害が表われた。研究者は、業界のいう安全値1日に体重1kg当たり1000mgは決して安全ではないと指摘した。〔GM Watch 2018/7/24〕


●耐性パパイヤ・ウイルスが出現

 米国で開発されたパパイヤ・リングスポット・ウイルス病抵抗性のGMパパイヤは、アジアを中心に、それぞれの地域の品種で研究が進められてきた。このたび中国で開発されたGMパパイヤのウイルスに耐性が生じ、病気にかかることが判明した。耐性が見つかったのは「Huanong1号」で広東省や海南省で感染が確認された。広州にある華南農業大学のZilin Wuらの研究チームが実験し、新しいウイルスの系統が生じ、パパイヤの耐病性が失われたことを確認した。この研究は「ネイチャー・オンライン版」(2018年5月29日)に掲載された。〔GM Watch 2018/8/7〕


●GM作物のBt毒素はアレルギーを引き起こす

 メキシコの国立オートノーマ大学のカリア・I・サントス-ビギル(Karia I.Santos-Vigil)らの研究チームは、マウスを用いた実験で、Bt菌そのものが持つ殺虫毒素より、GM作物内に作らせる殺虫毒素の方がより危険であることを明らかにした。実験に用いたのはBt毒素のGM「Cry1Ac」で、投与したマウスはアレルギーあるいはアナフィラキシーを発症した。マウスの口、鼻、耳のまわりに軽いアレルギー症状が出ただけでなく、ぜいぜいと喘ぎ、毛を逆立て、下痢になった。さらに腸のリンパ球の過形成、リンパ節の細胞数が異常なほど増大した。これらの現象は、食物アレルギーや炎症性腸疾患、結腸癌に関連して起きる症状である。このことから、Bt菌がもともと持つ毒素よりも、GM作物のBt毒素の方が免疫系に影響しアレルギーを起こしやすい、と研究者は指摘している。〔International immunopharmacology 2018/8,61〕


●GM飼料を用いた鮭の改造実験

 GMカメリナを飼料に用いた鮭の改造実験が、スコットランドのスターリング大学のDouglas Tocherらの研究チームによって進められている。鮭の栄養価を高めるため、長鎖の脂肪酸であるオメガ3脂肪酸を増やしたGMカメリナを与えた。鮭の場合、もともとオメガ3脂肪酸は多いが、養殖では低下するため、改造した飼料で低下を防ぐのが目的だという。〔BBC News 2018/8/1〕