■2018年11月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース



●EU事情
●ポーランドが厳格なGM食品表示へ

 ポーランド農業省が、GM飼料を与えた家畜の畜産加工品の表示を含む、EUの基準を上回るGM食品表示の自主基準を発表した。市民などの提起に応えたこの基準は、今秋上院議会に提出、採択される予定である。〔USDA GAIN Report 2018/7/30〕


●ベルギー全土でグリホサート一般販売禁止へ

 ベルギー政府は除草剤グリホサートの一般市民向け販売を禁止する、と発表した。すでにフランダース、ブリュッセル、ワロンの3地域で禁止していたが、全土に拡大することになった。なおベルギーは、欧州でのモンサント社の除草剤生産拠点である。〔GM Watch 2018/10/4〕


●EUのゲノム編集規制を受けて英国では

 英国農相のジョージ・ユースティスは、ゲノム編集など新しい植物育種技術を規制の対象とした欧州司法裁判所の判断について「影響を受けない」と述べ、土壌協会(Soil Association)などから批判が続出している。同協会は、ゲノム編集技術はGM技術同様の危険性があり、農薬の使用量を増やし、食の安全を脅かすGM作物の二の舞になる可能性があると指摘した。またこの考えは、IFOAM(国際有機農業運動連盟)と共有されている、と述べた。〔South West Farmer 2018/10/7〕

●オセアニア事情
●豪州はゲノム編集を規制しない方向へ

 10月11日、アデレードで開催されたオーストラリア連邦政府・州政府合同の遺伝子技術に関する会合で、ゲノム編集など新たなバイオテクノロジーに関して議論が行われた。すでに同国遺伝子技術規制当局(OGTR)は規制対象としないよう求めており、規制を外す方向で議論が進んでいる。〔Friends of the Earth 2018/10/10〕


●北米事情
●発癌物質グリホサート訴訟判決、バイエルが上訴へ

癌になった原因は除草剤ラウンドアップの主成分グリホサートによるもの、とモンサント社に賠償金の支払いを命じた判決(本誌2018年9月号参照)に対して独バイエル社CEOベルナー・バウマンが、上訴することを明らかにした。バイエル社の株主のあいだでは、モンサント社買収の際に、この裁判を軽視したのではないかと指摘する声も少なくない。今後の裁判の行方によっては、CEOの責任を問う声が大きくなりそうだ。〔Wall Street Journal 2018/9/18〕


●GMO開発研究者がその実態を暴露

 モンサント社の元チームリーダーで、シンプロット社の元ディレクターとして計26年間、GMジャガイモを開発してきたカイアス・ロマンス(Caius Rommens)が、開発の実態を暴露した。米国農務省(USDA)や食品医薬品局(FDA)は、彼が作成したデータに基づき承認した。データには意図しない影響については示さなかったし、培養の過程で起きた多くのランダムな突然変異についての言及は避けたし、潜在的に生じるアレルゲンや毒性については調べもしなかった、という。〔Sustainable Pulse 2018/10/9〕

●米国のホームセンターがグリホサート製品撤去

 ワシントン州のアイランド・ホームセンター&ランバーとスリフトウェイが、ラウンドアップおよびグリホサート関連除草剤を店頭から撤去すると発表した。健康や環境を危険にさらすグリホサートを拒否する市民の働きかけを受けたものである。〔Vashon-Maury Island Beachcomber 2018/10/3〕


●国防総省支援で新たな生物兵器開発か?

 米国では、国防総省国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けて、昆虫にウイルスを運ばせて作物に感染させ、病気に強い作物に変えるプロジェクトが進められている。ウイルスの伝播が引き起こす意図しない悪影響が起き、生物兵器開発につながるのではないかという懸念が広がっている。マックス・プランク研究所のガイ・リーブスによると、農業より生物兵器に用いる方が簡単だという。研究者の間でも農業には不向きな技術であるという指摘が多い。〔The Guardian 2018/10/4〕


●ゲノム編集
●厚労・文科省がヒト受精卵へのゲノム編集を容認

 9月28日、厚労省と文科省の合同有識者会議(厚労省の厚生科学審議会科学技術部会のヒト受精胚へのゲノム編集技術等を用いる生殖補助医療研究に関する専門委員会と、文科省の科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の受精胚へのゲノム編集技術等を用いる研究に関する専門委員会)が開催された。会議では、ゲノム編集技術などによる、ヒト受精卵への応用を禁止するのか、容認するのか、どこまで容認するのかを検討してきた。第4回目の今回、指針案がまとめられ、研究に限定して人間の受精卵への応用を容認した。これまで認めなかった、人間の受精卵に対する遺伝子操作を容認したのである。解禁したことで、将来的には全面解禁の可能性を切り開いたといえる。

目的は生殖補助医療で、扱う受精卵は不妊治療の余剰胚に限定する。人や動物の体内に戻すことは禁止する。研究機関は倫理委員会を設置し審査するとともに、国も倫理委員会を設置し確認する。基本的に研究に関する情報は公開される、となっている。

●ゲノム編集大豆、米国で市場へ

 米国カリクスト社は、開発したゲノム編集大豆が今秋収穫され、高オレイン酸大豆油として販売される、と発表した。米国では、ゲノム編集ナタネに次ぐ収穫である。この大豆について米農務省は、GMOではないので規制しない。〔Calyxt 2018/10/4〕

●遺伝子ドライブ技術でケージ内の蚊が全滅

 ゲノム編集の仕組みを遺伝子に組み込み、次世代以降に受け継がれるようにした「遺伝子ドライブ技術」で改造した蚊を用いて、ケージの中の蚊を死滅させる実験が成功したと、英国ロンドン王立大学のアンドレア・クリサンティらの研究チームが発表した。「ネイチャー・バイオテクノロジー」オンライン版に掲載された。〔Nature Biotechnology 2018/9/24〕