■2018年11月号

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バイオジャーナル

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●遺伝子組み換え作物
●グリホサートが抗生物質耐性菌を増やす

 最新の研究によって、除草剤グリホサートやジカンバが抗生物質耐性菌を増やすことが示された。これらの除草剤がある時と無い時を比較したところ、10万倍のスピードで抗生物質耐性菌が増えていた。実験を行なったのはニュージーランド・カンタベリー大学教授ジャック・ハイネマンらの研究チームで、「抗生物質耐性は抗生物質だけがもたらすのではなく、抗生物質と化学物質の組み合わせが大きい」と指摘している。論文は「マイクロバイオロジー」163号に掲載された。〔Microbiology 163,1791-1801〕


●グリホサートがミツバチの死や崩壊をもたらす

 ミツバチの死や群れの崩壊にグリホサートが関係していることが示された。グリホサートがミツバチの腸内細菌にダメージを与え、抵抗力を殺ぐのがその理由である。テキサス大学オースチン校のエリック・V・S・モッタらの研究によると、ミツバチには成長を促すための独特の腸内細菌叢があり、それが影響を受けると病原菌に対する抵抗力が奪われ、死亡率が上昇するという。ミツバチをグリホサートに曝露したところ、主要な腸内細菌8種類の内4種類が大幅に減少した。その内1種類は危険な病原菌から防ぐ重要なものだった。この4種類の病原菌が減少したミツバチの死亡率は高かったという。実験結果は米国科学アカデミー(PNAS)誌に掲載された。〔PNAS 2018/9/24〕


●対象ペットフード全製品からグリホサート検出

 コーネル大学のブライアン・リチャーズらの研究チームが、ペットフードも除草剤グリホサートに汚染されていることを明らかにした。18種類のペットフードを分析した結果、すべてから1キログラム当たり80〜2000マイクログラムのグリホサートを検出した。そのうち1製品はGMOフリー表示だった。研究者は、非GMO飼料へのGM汚染を防ぐ必要がある、と指摘している。この調査は、持続可能な未来のためのアカデミック・ベンチャー基金のためのアトキンソン・センターの助成を受けて行われ、『環境汚染(Environmental Pollution)』に掲載された。〔Technology Networks 2018/10/2〕

●iPS細胞
●iPS細胞でヒト卵原細胞を作成

 人間のさまざまな臓器や組織に分化できるヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、卵子の大本の細胞である卵原細胞が作成された。作成したのは京都大学教授斎藤通紀らの研究チームで、9月20日付サイエンス誌オンライン版に掲載された。研究チームは、これまでマウスでiPS細胞から卵子を作成し、受精させ、次世代を誕生させているが、ヒトの卵子の基となる細胞を作成したのは初めてである。〔東京新聞 2018/9/21〕
●省庁動向
●消費者庁がGM食品表示変更の説明会開催

 消費者庁はGM食品表示を変更するにあたり、東京を皮切りに仙台、大阪、福岡、札幌、岡山、名古屋で説明会を開催し、同時に一般からの意見を募集した。今回の変更では「遺伝子組み換えでない」あるいは「遺伝子組み換え大豆不使用」などと表示できる範囲を検出限界値(ほぼ0%)に引き下げることが提案されている。この点については、消費者のみならず豆腐業界や総合商社などの反対も根強い。

●企業動向
●カネカが生分解性プラスティックの原料を増産

 化学メーカーのカネカが、今年8月に生分解性プラスティックの原料「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の生産能力を年間1000トンから5000トンに引き上げ、10月にはさらに2万トンに増強すると発表した。汚染が深刻化するマイクロプラスティック問題を受けて、生分解性プラスティックの世界需要は2022年には100万トンを超えると見込まれている。〔カネカ 2018/10/15〕