■2018年12月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●アフリカ事情
●ケニアの大統領がBt綿栽培に向けて指示

 ケニア大統領は保健省、農業省、貿易・産業・企業省に対して、Bt綿栽培の可能性の検討を指示した。政府は2022年までに導入を図る予定で、導入に向けた動きが加速しそうである。〔ISAAA 2018/10〕

●ゲノム編集
●米国でゲノム編集大豆収穫

 米国でゲノム編集技術を応用した高オレイン酸大豆が収穫された。同技術を応用した作物としては除草剤耐性ナタネに次ぐものである。大豆は3州の計1万6000エーカー(約6475ha)に作付けされた。開発したカリクスト社は、次に2020年までに高食物繊維小麦の栽培を予定している。その他、うどん粉病抵抗性小麦、高オレイン酸低リノール酸大豆などの市場化を図っていく予定である。〔ISAAA 2018/10〕

●生物多様性条約
●生物多様性条約(COP14)、遺伝子ドライブ技術が焦点に

 エジプトのシャルム・エル・シェイクで11月17日から29日にかけて、生物多様性条約第14回締約国会議(COP14)が開催された。同時に、カルタヘナ議定書第9回締約国会議と名古屋議定書第3回締約国会議も平行して開催された。今回のテーマは「人間と地球のための生物多様性への投資」だが、環境保護団体が最も関心を持っていたのが、専門家会議で検討中の、合成生物と遺伝子ドライブ技術である。この技術は生物多様性への影響が大きいことから、どのように対応していくか議論が進められている。
会議に向けて、アフリカの19の市民団体が共同で声明を発表した。声明では、合成生物と遺伝子ドライブ技術への反対を表明し、生物多様性を守り、種子を守り、コミュニティを守ることを求めている。とくにブルキナファソで予定されている、遺伝子ドライブ技術で開発した蚊の放出実験は新たな侵略行為だ、として強く反対の意思を示した。〔ETC Group 2018/11/20〕
次回2020年の締約国会議は中国で開催される。2010年の名古屋会議の際に定めた、2020年までの自然保護の目標「愛知ターゲット」が期限を迎えるため、新たな目標が提案される予定である。

●省庁動向
●GM植物が郵送途中で紛失

 文科省は10月24日、立命館大学がGM植物を紛失したことを明らかにした。今年6月8日、GMシロイヌナズナの種子を立命館大学から横浜市立大学宛に郵送したところ、封筒が破れ、種子の入ったチューブがなくなっていた。事件発生は5月18日だったが、文科省への報告が遅れたため回収もできず、しかも立命館大学では運搬にあたっての運用ルール等が不備であることも判明した。

●厚労省遺伝子組換え食品等調査会、規制せずで固まる

 ゲノム編集操作食品の食品衛生法上の規制を検討している、厚労省の薬事・食品衛生審議会の遺伝子組換え食品等調査会は、11月19日に業界団体、消費者団体などからの聞き取りを行なった。この間の審議で、「どのような遺伝子操作を行うかではなく、最終製品がどうなるかで遺伝子組み換え技術と同じに扱うかどうかを判断する」という、厚労省のゲノム編集技術規制の方針が示された。そのため、最終製品では操作を行なったかどうか判断できない「DNAを切断するだけ」のゲノム編集操作食品に関しては規制の対象としないことが明確になった。また、挿入したDNAが最終的に取り除かれた食品や、RNA干渉法のようにDNAを操作しないものも規制の対象にならない、ということになる。このままでは欧州司法裁判所が規制の対象とした新植物育種技術の多くが日本では規制の対象とならず、さらに表示の対象外にもなりそうである。