■2019年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集食品、規制なしで流通へ




 ゲノム編集食品の安全性を確保するための扱いを検討してきた専門家機関の食品衛生審議会食品衛生分科会の遺伝子組換え食品等調査会の審議が12月5日に終了し、そこでの結論を受けて、上部組織である新開発食品調査部会の審議が12月12日から始まった。この調査部会の審議も関係団体からのヒアリングを経て、1月17日に終了した。約1か月という拙速なスケジュールで、あっという間に「ゲノム編集食品に関しては基本的に規制しない」という結論が出されたのである。

2018年6月に閣議決定された「統合イノベーション計画」では、今年度中にゲノム編集技術の法的規制問題に決着をつけることが求められ、忠実にそのスケジュール通りに進められたことになる。先の調査会においては、食品衛生法での対応は、ゲノム編集技術でDNAを切断するだけのケースを始め、カルタヘナ法では規制の対象となった1から数塩基を挿入するケースも、「組み換えDNAには当たらず、安全審査の対象外にする」という結論だった。

このような規制緩和を行なった理由として、@DNAを切断するだけのケースや、1から数塩基の挿入や置換、欠失は自然界でも起き、また自然界で起きることと区別できない。A突然変異を利用した際に生じるオフターゲットと、ゲノム編集で起き得るオフターゲットの差異を見極めることができない。Bオフターゲットを完全に解析することはできない。Cスウェーデン・カロリンスカ研究所およびノバルティス社の研究は発がん性を促進することを示したものではない。D当初生じる悪影響は選抜育種で排除される、というものである。以上は、いずれもこれまでゲノム編集技術に関する科学的知見で否定されてきた論理である。

調査会の結論を受けて、新開発食品調査部会が1月17日に提出した最終的な結論は、届け出不要、罰則も必要なし、というものだった。食の安全を守るという食品衛生法の精神をないがしろにしたものといえる。今後、パブリックコメントを経て、今年3月末までに確定する予定である。