■2019年5月号

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バイオジャーナル

ニュース


●オセアニア事情
●豪州政府がゲノム編集食品規制せず

 オーストラリアの遺伝子技術規制局は、ゲノム編集技術食品に関して、安全審査を不要とし、表示も不要とする方針を示した。同国は、動物へのゲノム編集技術規制をいち早く解除した国である。この方針は正式な承認を経て発効される。〔GM Watch 2019/4/13〕



●ゲノム編集技術
●RNA干渉法による殺虫剤が土壌の生態系に影響

 RNA干渉法を利用した殺虫剤が、土壌微生物に影響を及ぼすことがわかった。この殺虫剤は二本鎖RNA(dsRNA)を昆虫に侵入させ、遺伝子の働きを妨げて死滅させる。そのdsRNAが土壌に達した際にどうなるのか、米国ワシントン大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者が共同で実験したところ、土壌中の酵素がdsRNAを分解する一方で、土壌の粒子に付着して保護された状態で微生物に取り込まれることもわかった。研究者は、土壌の生態系に大きな影響が出る可能性があると述べている。〔Environmental Science & Technology 2019/1/25〕



●除草剤
●2,4-Dが腸内細菌に破壊的な影響を及ぼす

 除草剤2,4-Dが、規制以下の使い方でも腸内細菌に破壊的な影響を及ぼすことがわかった。米国ノースカロライナ大学のPengcheng Tuらの研究チームは、マウスを低い濃度の2,4-Dに暴露させ、腸内細菌とかかわりがある血漿中のアシルカルニチン・レベルを調査した。その結果、同レベルが低下していた。腸内細菌は肥満や精神面、さらには癌ともかかわりがあり、さまざまな影響が考えられる。〔Scientific Report 2019,9,4363〕


●グリホサートが土壌の健康に影響する

 除草剤ラウンドアップなどの主成分グリホサートによる農地への汚染が、ヨーロッパの長期的な食料の安全性に脅威を与えている。調査したオランダのワーヘニンゲン大学のシルバ・ベラ(Silva Vera)らは、特に深刻なのが土壌の健康への影響だ、と指摘している。この研究で再び注目されたのが、2015年発表のウィーン大学のマリン・ガウプ・ベルグハウゼン(Mallin Gaupp-Berghausen)らが行なった、グリホサートがミミズの活動を低下させるという研究報告である。それによると、グリホサート散布後3か月以内にミミズの個体数は56%減少した。ミミズの減少は土壌の栄養分の低下をもたらすことが知られている。〔Politico 2019/4/3〕


●製品ラウンドアップの方がグリホサート単体より腎臓への毒性が強い

 腎臓への毒性は、ラウンドアップの方が、その主成分グリホサートより強いことが実験で確認された。実験を行なったのはナイジェリアのコベナント大学のGabriel A.Dedekeらで、「国際毒性ジャーナル(International Journal of Toxicology)」2018年6月11日号に発表された。製品のラウンドアップの方が、グリホサートより腎臓への毒性が強いのは、展着剤などの添加剤によるものと思われる。実験は1グループ8匹で、ラウンドアップ投与の3グループ、グリホサート投与の3グループ、投与しない群1グループの、計7グループ56匹で行われた。投与群にはグループごとに濃度3.6mg/kg体重、50.4mg/kg体重、248.4mg/kg体重を12週間毎日強制投与したところ、ラウンドアップの群に腎臓バイオマーカーのクレアチニンなどの数値に有意の変化が見られた。またラウンドアップを投与した群の腎臓には、より多くのグリホサートの残留が見られた。〔GM Watch 2019/4/7〕


●グリホサートは非ホジキンリンパ腫をもたらす

 フランス、ノルウェー、米国の3か国で、農薬に暴露して危険な状況にある人たちへの調査が行われた。それによると、357万4815人の農民及び農業従事者のうち31万6270人が癌を発症し、そのうち2430人が非ホジキンリンパ腫だった。グリホサートを使う人と、農薬を限定しない人を比較したところ、グリホサートを使う人に非ホジキンリンパ腫罹患者が多かった。研究は国際癌研究機関(IARC)のマリア・E・レオンらが行ない「国際疫学ジャーナル」に掲載された。〔International Journal of Epidemiology 2019/3/18〕