■2019年6月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●目的外の脅威をもたらすCRISPR-Cas9


 ゲノム編集がもたらす新たな脅威が次々に明らかになってきた。その1つが、DNAを切断した際に起きる現象である。ゲノム編集でCRISPR-Casを用いてDNAを切断し、再びDNAが結合する修復の過程で、DNA塩基が欠落したり、挿入された。これは非相同末端結合(NHEJ)として知られているもので、ゲノム編集でDNAを切断し遺伝子を壊した際に起きる現象である。実験を行ったのは、テキサス大学のルビナ・トゥラドゥ(Rubina Tuladhar)らの研究チームで、ヒトの細胞を用いた。研究者は、ゲノム編集ではさまざまな方法が開発されているが、方法に関係なく起きうる現象だと指摘している。〔bioRxiv 2019/4/1〕

もう1つは、ウイルスの変化に関してである。ゲノム編集でウイルス耐性キャッサバを開発したところ、突然変異を起こし別のウイルスが増殖した。カナダのアルバータ大学、ベルギーのリエージュ大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)の植物学者らが行なった、CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集で、病気を引き起こすウイルスに感染しにくいキャッサバを開発したところ、別の1本鎖の環状DNAを持つジェミニウイルスが増殖していた。著者の1人ETHのデバン・メフタ(Devang Mehta)は、ゲノム編集は新たな脅威をもたらしうる、と述べている。〔Phy.org 2019/4/26〕