■2019年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集赤ちゃん、今度はロシアで

 中国に続きロシアでもゲノム編集赤ちゃんを誕生させる計画が進められている。計画しているのは分子生物学者で、モスクワにあるロシア最大の不妊治療クリニックのゲノム編集研究室長デニス・レブリコフ(DenisRebrikov)。中国の賀建奎と同様にHIV(エイズウイルス)に感染しにくい赤ちゃんの誕生を目指している。手法も同じで、HIVウイルスが感染の際にかかわるCCR5タンパク質をゲノム編集によって壊す。中国では男性がHIV感染者だったが、ロシアでは女性が感染者のケースで行う予定。ロシアでのゲノム編集赤ちゃんを目指す動きに、世界中から批判が起きている。〔Nature2019/6/10〕


そんななか、中国のゲノム編集赤ちゃんにかんして、新たな問題が浮上してきた。ゲノム編集では、遺伝子を壊す際のオフターゲット効果によって、さまざまな影響が出ることが最大の問題となっている。中国の赤ちゃんのケースでは、CCR5遺伝子を壊したために西ナイルウイルスに感染しやすくなり、インフルエンザが重症化しやすくなったという。加えて、カリフォルニア大学の神経生物学者のシルバは、脳の認知機能にも影響すると指摘した。すぐれた脳になる可能性があるというのである。また脳卒中からの回復力が大きいともいわれており、そういった点を考慮して実験が行われたのではないかという説もある。


今回、新たに分かったことは、寿命との関係である。「ネイチャー・メディスン」誌に掲載された論文によると、CCR5遺伝子に変異を持つ人は、寿命が短くなる可能性があるというのである。研究を行なったのは、カリフォルニア大学バークレイ校のラスムス・ニールセンらで、英国のバイオバンクに蓄積されている遺伝子と健康に関するデータ40万人分以上を解析したところ、CCR5遺伝子に変異がある人は、76歳まで生きる可能性が21%減少するということが判明した。〔NatureMedicine 2019/6/3〕