■2019年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●カナダでもグリホサート集団訴訟相次ぐ

 7月4日、カナダの農民2人が、ラウンドアップを使用していたため非ホジキンリンパ腫になったとして、ノバスコシア州最高裁判所に提訴した。カナダでは5月にサスカチュワン州とケベック州で提訴されており、今回が3番目の集団訴訟である。〔The Chronicle Herald 2019/7/6〕


●トランプ政権がGMO促進の新政策

 米国トランプ政権は6月11日、GMO規制の「ストリームライン(流線)」命令を下した。これは大きく2つの柱から成り立ち、1つはGMO受け入れを促進するための科学教育と消費者教育の徹底で、もう1つは国際的な販売促進のための貿易障壁の除去である。後者の最大の対象はEUと思われ、とくにEU離脱を決めた英国が当面の対象とみられる。〔USA Government Federal Register 2019/6/14〕

●人工牛肉バーガーで胃腸障害

 米国を中心に販売が広がる、インポッシブル・フーズの人工牛肉バーガー「インポッシブル・バーガー」をめぐり安全性論争が活発化している。原料は、GM酵母由来の大豆レグヘモグロビン(SLH)タンパク質。このバーガーを食べた後に胃腸障害が起きる人が続出している。同社の委託による動物実験でも、ラットに説明できない体重増加と毒物を摂取したような兆候が表れていると、この論文を分析した科学者が指摘し、GMOサイエンス誌に発表した。〔GMO Science 2019/6/25〕


●ハワイ州でグリホサート使用が半減

 農薬企業が集中し、GMO開発の実験場となったハワイ州では農薬汚染による健康被害が問題になっていたが、市民の取り組みで大きな成果を上げている。まずGM企業による農薬使用量が半減。同州政府教育省は公立学校でのグリホサートの使用を禁止し、実験場でグリホサートを使用する場合は、学校との間に緩衝地帯を設けることを義務付けた。〔Gary Hooser’s Blog 2019/7/1〕


●米国で動物実験廃止の検討始まる

 米国環境保護庁(EPA)は動物実験廃止へ向けて検討を始めた。代替にはコンピュータ・モデルと細胞実験を行うことになりそうである。あくまで「動物福祉」を口実に進められているが、農薬企業など化学産業にとっては大変な利益をもたらす。グリホサート訴訟でも動物実験の結果が被害者勝訴の重要な決め手になっており、環境保護団体は、動物実験の終了は毒物規制の終了につながりかねないと批判している。〔The Intercept 2019/7/3〕

●中南米事情
●米国の圧力に屈し、コロンビア政府グリホサート禁止を撤回

 コロンビア政府はトランプ政権の財政援助打ち切りという脅しに屈し、グリホサート散布禁止措置を撤回した。これに対してカトリックの司教たちは、人々の健康を損ねると強く抗議した。コロンビアでは、除草剤散布問題は麻薬栽培と深くかかわり、複雑な様相を呈している。元大統領のサントスは米国の圧力に抵抗したが、現在のデュケ大統領は協調政策を執っている。〔Prensa Latina 2019/6/25〕



●欧州事情
●オーストリアがグリホサート全面禁止

 オーストリア議会は7月2日、すべての分野でグリホサートを禁止する法案を可決した。大統領の合意が得られれば、すべての分野で禁止する世界最初の国となる。これまでEU域内では、輸入禁止、公共の場での使用禁止、農業への使用禁止など、ごく一部の禁止にとどまっていた。この法案成立の背景に、オーストリアの活発な有機農業がある。有機農業は全農地の23%を占め、EU平均の7%を上回っている。〔Reuters 2019/7/2〕



●独メルケル首相がグリホサート終焉と発言

 6月26日、ドイツのメルケル首相は議会下院で、グリホサートはまもなく終焉を迎えるだろうと述べた。この発言は、ドイツ企業であるバイエル社に対する挑戦状と受け止められている。バイエル社にとってグリホサートはGMOで得られる利益の多くを占めている。〔Reuters 2019/6/26〕


●ドイツ最大手の鉄道会社がグリホサート使用中止へ

 ドイツ最大手の鉄道会社ドイッチェ・バーンがグリホサートの使用を段階的に廃止することを決めた。ドイツ内に3万3000kmの鉄路を有するこの会社は、沿線の雑草対策に年間65万トン近くの除草剤を使用している。代替には、お湯、電気、紫外線などの利用を検討している。〔The Local 2019/6/14〕