■2019年10月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●関税引き下げ間近の米国産牛肉に成長ホルモン残留

 日米間の自由貿易協定の締結に向けた合意がなされた。日本政府は米国産牛肉の関税について、現行の38.5%から段階的に引き下げ、最終的に9%になることを受け入れた。こうなると、ただでさえ弱い日本産牛肉の競争力がさらに弱体化し、日本の食卓は米国産牛肉によって席巻され、占拠される可能性が増幅する。

米国産牛肉には成長を早め、太らせるために肥育ホルモン剤や抗生物質、さらには赤身を増やすラクトパミンが使われている可能性が高い。現在使用されている肥育ホルモン剤は、合成ホルモン剤は酢酸メンゲステロール、酢酸トレンボロン、ゼラノールの3種、天然ホルモン剤は17β-エストラジオール、プロゲステロン、テストステロンの3種の計6種類である。天然のものに関しては残留基準値が設定されておらず、合成のものに関しては、コーデックス委員会の諮問機関であるJECFA(FAO/WHO食品添加物合同専門家会議)による残留基準値が国際基準となっている。

日本では肥育ホルモン剤そのものを認可していないため、日本の牛肉生産には使われていないが、米国産牛肉の輸入は認めている。認可されていないのは、肥育ホルモン剤が牛肉に残留して、微量でも人間の体内に取り込まれると内分泌系が攪乱され、さまざまな病気や障害にかかりやすいからである。

英国の市民団体GMウォッチが見つけ出した論文によると、米国の牛に成長ホルモン量が多いのは、肥育ホルモン剤の使用が原因と思われることがわかった。論文は、『公衆衛生と栄養(Public Health Nutrition)』2019年2月27日号に掲載されたもので、米国アトランタにあるエモリー医科大学のジャン・A・ウェルシュらがウシ成長ホルモン(bGH)、およびそのホルモンに関連して肝臓で分泌されるホルモン(IGF-1)を調査した。一般販売の牛乳と、有機飼料を用いた牛乳を比較したところ、有機の牛乳は検出限界値以下であったのに対し、通常の牛乳は、bGHの残留平均値が9.8mg、IGF-1の平均値が3.5mgだった。成長ホルモンが過剰になると、乳がんなどのがんになりやすくなる。過去には、遺伝子組み換え成長ホルモン剤の使用が問題となり、EUが米国産牛肉の輸入を停止している。米国産牛肉には、肥育ホルモン剤に加えて、成長ホルモンそのものも多く残留していることがわかった。〔GM Watch 2019/8/25〕