■2019年10月号

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バイオジャーナル

ニュース


●ゲノム編集
●ブラジルがゲノム編集牛導入計画を中止

 ブラジルで進められていたゲノム編集牛導入計画が中止となった。この計画は2018年10月にスタートし、米国ミネソタ州のベンチャー企業、リコンビネティクス(Recombinetics)社からゲノム編集で角をなくした牛を導入する予定だった。その牛はたしかに角はなかったが、複数の抗生物質耐性遺伝子(ネオマイシン・カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子)が含まれていた。それを受けて、中止が本決まりとなった。
この牛はゲノム編集技術の象徴として、ポスターなどでその成果を喧伝してきた。2017年から同社は、この牛を「農場革命」の主役として宣伝し、それに乗ったのがブラジルだった。〔Wired 2019/8/26ほか〕

●ブドウのゲノム編集研究、今度は「巨峰」で

 農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の果樹茶業研究部門は、ゲノム編集技術を用いたブドウの品種の改造に取り組んでいる。このたびシャインマスカットに続き、巨峰でも取り組みを開始した。改造は、果皮着色の改変・改善を目指したレトロトランスポゾン遺伝子の除去である。〔日経バイオテク 2019/9/13〕

●GM昆虫
●GM蚊が生存し、コントロール不能に

 オキシテック社がブラジルで放出したGM蚊の追跡調査をしたところ、死滅しているはずのGM蚊が生き残り、拡大していたことが判明した。米国エール大学のベンジャミン・R・エヴァンスらの調査によると、放出地域で生き残っている蚊の10〜60%がGM蚊のゲノムの一部を持っていた。研究者はこの状況について「単に実験が失敗だったという以上に、いったん放出すると制御不能になることを意味する」と述べている。〔Nature Scientific Reports 2019/9/10〕

●省庁動向
●7種類の遺伝子を挿入したGM綿承認へ

 農水省は8月27日、日本モンサント社が申請した7種類の遺伝子を挿入したGM綿を安全と評価し、一般からの意見募集を開始した。このGM綿は、カメムシ目害虫、アザミウマ目害虫、コウチョウ目害虫、チョウ目害虫を対象とした4種類の殺虫毒素遺伝子と、除草剤ジカンバ、グルホシネート、グリホサートの3種類の耐性遺伝子を導入している。農水省の安全審査は、その1つ1つが承認ずみだと複数であっても特に問題なしとしているが、このように7つもの遺伝子を導入した作物の承認は初めてである。

●企業動向
●モンサント社のメディア、議会工作が次々と明らかに

 米国で進行しているラウンドアップをめぐる訴訟で、モンサント社による専門誌やジャーナリズム、議会への工作が次々に明らかになった。専門誌への工作では、モンサント社が介入した3つの論文の掲載の撤回がせまられている。いずれもラウンドアップに発がん性はないとした論文で、編集者は撤回を拒否している。例えば「Journal Critical Reviews in Toxicology」にピアレビューを経て掲載された論文の著者は16人となっていたが、事実上執筆したのは作家のラリー・キーアで、モンサント社は彼に2万7400ドルを支払っていた。〔US Right to Know 2019/8/23〕
IARCをターゲットに議会工作も行なっている。国際がん研究機関(IARC)がグリホサートの発がん性を認定して以来、モンサント社はIARCと全面対決してきた。そのために連邦議会の共和党議員ジェイソン・チャフェッツ、トレイ・ゴーディ、ラマー・スミスらを通じて、IARCの弱体化を狙った働きかけをしている。なかでもラマー・スミスは、下院の科学委員会の議長としてIARCを攻撃している。〔Greybull Gazette 2019/9/9〕