■2019年11号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース


●除草剤
●薄い濃度のグリホサートと乳がんの関係

 仏ナント大学のマノン・デュフォレセルらが、グリホサートと乳がんの関係を示す論文を発表した。1兆分の1というごく薄い濃度のグリホサートであっても、他の生体物質と一緒に存在すると乳がんを引き起こすことが判明した。非がん性のヒト乳房細胞を21日間試験管内で極めて低濃度のグリホサートに曝した後、その細胞をマウスに挿入し、発がん性を見た。グリホサートに曝した後注入した細胞はがん化しなかったが、ヒトに広く存在する生体物質(マイクロRNA)を組み合わせて注入した細胞は、がん細胞化して増殖が見られた。この結果、人間がグリホサートを摂取した場合、ごく低レベルでも乳がんを引き起こす可能性がある。〔Frontiers in Genetics 2019/9/27〕


●ネスレがコーヒー豆の農薬検査体制を強化

 ネスレは、インドネシアとブラジル産のコーヒー豆のグリホサート残留値が規制値の限界に近づいたことから、10月1日から検査体制を強化した。検査体制を強化したのは、規制の厳しいEU、オーストラリア、マレーシアに出荷する豆についてのみである。〔Sustainable Pulse 2019/9/27〕


●省庁動向
●人の受精卵へのゲノム編集応用拡大の検討始まる

 総合科学技術・イノベーション会議は去る6月19日、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」の見直し等に係る第二次報告書をとりまとめた。報告書タイトル「ヒト受精胚へのゲノム編集技術等の利用について」が示すとおり、人間の受精卵へのゲノム編集による遺伝子操作の拡大を目指したものである。報告書を受けて文科省と厚労省は、次の2項目の指針を整備し、推進の体制をとれるよう検討を開始した。
@遺伝性・先天性疾患研究を目的とした余剰胚にゲノム編集技術等を用いる基礎的研究。
A生殖補助医療研究を目的とした配偶子または新規作成胚にゲノム編集技術等を用いる基礎的研究。
文科省・厚労省両省の3つの専門委員会は合同で10月21日までに全4回の会議を開催。今後、報告をまとめ、応用の拡大が図られる。


●豚コレラ対策のGMワクチン、食肉の安全性を評価

 農水省は、豚コレラ対策として従来から使用している生ワクチンに加えて、新たにGM技術を用いた新型の「マーカーワクチン」の有効性の検討を開始し、接種後の食肉の安全性の評価を食品安全委員会に要請した。マ−カーワクチンは、従来のワクチンと異なり、感染した豚とワクチンを接種した豚との抗体の区別がつくため、感染の実態がつかみやすい。認可されれば使用の拡大が見込まれている。食品安全委員会は9月24日に諮問し、ほとんど議論もないまま、10月7日に「食品として問題ない」と結論を出した。


●ゲノム編集
●環境保護団体がゲノム編集に関する新たな報告

 環境保護団体FoE(Friends of the Earth)とLogos Environmentalが、ゲノム編集は農場の工場化を促進し、気候変動を悪化させ、健康に悪影響をもたらすとする報告をまとめた。環境悪化の要因として、動物の集中管理があげられている。最近、ゲノム編集で作られた角のない牛から抗生物質耐性遺伝子が見つかったが、その他にも2018年のウォルストリート・ジャーナル上に公開された研究によれば、舌が大きくなったウサギや余分な椎骨を持つ豚が見つかっている。このような異常なタンパク質はアレルギーなどをもたらす可能性があると指摘している。〔FoE 2019/9/17〕