■2020年2月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集切断後の意図しない変異

このところ、ゲノム編集技術で意図しない変異が起きていると指摘する論文が相次いで発表されている。
ゲノム編集の結果を迅速に分析できるツールが開発され、DNAの切断と修復の状態がいち早く正確にわかるようになった。このツールを用いてデラウェア大学のブレット・M・サンズベリーらが、CRISPR-Casで切断して修復した箇所を分析した。その結果、切断・修復した周辺に、これまで考えられていた以上に微妙な変異が起きていることがわかった。これまでは切断箇所よりも離れた位置で起きていたオフターゲットが問題になっていたが、それとは異なる現象が切断箇所付近で起きていたのである。〔Nature Journal Communications Biology 2019/12/6〕


もう1つの論文では、ゲノム編集技術でDNAを切断して遺伝子を壊したはずなのに、切断・接合後にその遺伝子が不完全な形で働き、タンパク質を作り出しているケースが多数みられると指摘している。壊す前の遺伝子が作り出すタンパク質ではなく、不完全な新たなタンパク質が作られていた。この研究はドイツ・ハイデルベルクにある欧州分子生物学研究所のアルネ・H・シュミッツらの研究チームが、人間の細胞を用い、136の異なる遺伝子をターゲットにCRISPR-CasでDNAを切断した。その結果、3分の1の遺伝子は損傷を受けつつも、新たなタンパク質を生成していた。この結果について英国の分子生物学者マイケル・アントニオは、不完全な機能が残ったまま新たな機能を獲得すると、新たな毒性を産生するなどの問題を引き起こす可能性がある、と述べている。〔Nature Method 2019/10/28〕