■2020年3月号

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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●FDAがゲノム編集動物規制強化の異例の声明

 米国食品医薬品局(FDA)が、人びとの健康を守るためにゲノム編集動物の規制と監視体制を強化する必要がある、という声明を発表した。FDAがこのような声明を発表するのは異例のことである。声明はゲノム編集で開発した角のない牛から、抗生物質耐性遺伝子が検出されたことを受けてのもので、「ゲノム編集によるゲノムの変化が、動物にとって安全であり、食品を食べる人にとって安全であり、ゲノムの変化が意図したように機能することを確実にする必要がある」と述べている。〔U.S.FDA 2020/2/7〕

●カナダ政府がグリホサート擁護

 カナダ農業省は内々で、除草剤は必要なものであり、グリホサートは不可欠であり、発がんのリスクは低いとして規制しないなどを内部メールでやり取りしていたことが発覚した。米国で多発するグリホサート裁判を憂慮した農業省の役人間でやり取りされたものである。この事実にカナダ環境医師会は、IARC(国際がん研究機関)の「発がん性がある」とする見解はピアレヴューを経て公開された科学研究に基づいており、合理的であるとして、批判した。〔CBC News 2020/2/5〕

●行き詰まるアクア社のGM鮭

 成長を早めるように改造したGM鮭を開発したアクアバウンティ・テクノロジーズ社が経営難に陥っている。すでにカナダ・プリンスエドワード州政府など複数の州政府から資金援助を受けているが、養殖のコストを賄うためには不足の状況にある。GM鮭は、米国とカナダで生産や販売が承認されているが、パナマにあるパイロットプラントはすでに閉鎖し、プリンスエドワード島ロロ湾にある養殖場では育成中、米国インディアナ州の養殖場が本格稼働するのは2020年6月と、肝心の魚が販売できず、経費不足に陥っている。流通が始まったとしても、順調に販売できるとは限らない。2015年にIpsos Reidが行った調査では、カナダの消費者の45%が絶対に食べないと回答し、食べると答えた人はわずか11%だった。さらに88%が表示を求めている。〔CBAN 2020/1/30〕

●欧州事情
●英国、EU離脱でGMO、ゲノム編集の規制緩和か

 英国のEU離脱が正式に決まり、EU指令が適用されなくなるため、GMOもゲノム編集も規制緩和や廃止の可能性が強まった。今年1月初めのオックスフォード農業会議に参加した科学者は、食の安全が脅かされる可能性を懸念する、と表明した。とくに、英国には農薬企業と関係の深いローザムスッテッド研究所があり、農薬やGM作物、ゲノム編集作物の開発が進められていることを懸念材料として指摘した。〔The Times 2020/1/19〕

●EU再承認にかかわるグリホサートのデータをドイツの研究所が偽造

 グリホサートに関する研究でドイツの研究所が不正を行い、その偽造されたデータによってEUが再承認していたことが明らかになった。不正を行ったのは、ハンブルクの薬理・毒性学研究所(Laboratory of Pharmacology and Toxicology)で、死んだ動物を生きた動物としたり、がんの所見を炎症に変えたり、といった偽造をしていた。他にも偽造は行われており、現在、同研究所は刑事告発を受けている。〔PAN Europe 2020/2/12〕