■2020年4月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●モンサント社に代わりコルテバ社のGM大豆が拡大

 米国ではモンサント(現、バイエル社)のGM大豆が全大豆畑の大半を占め、2014年には93%に達した。しかし、ほとんどが除草剤ラウンドアップ耐性だったため、それに耐性をもつスーパー雑草の拡大、健康被害やそれに対する訴訟の増加で、同社のジカンバ耐性に代わりつつあった。しかし、ジカンバ耐性大豆もまた、投入する農薬の増加による経済的損失や健康被害が広がり、グリホサート訴訟同様相次いで訴訟が起こされている。その結果、最近増えているのがデュポン社とダウ・ケミカル社および米国の種子メーカー、パイオニア社が合併してできた農業に特化した企業、コルテバ・アグリサイエンス社の除草剤エンリスト(Enlist)耐性E3大豆である。今年はこの売り上げが大豆種子全体の20〜30%を占めると予測されている。〔Reuters 2020/3/4〕

●米国の貴重な蝶の減少に歯止めかからず

 除草剤耐性GM作物の広がりとともに減少している、生物多様性を象徴するオオカバマダラ蝶が危機的状況にあることが改めて示された。オオカバマダラが越冬するカリフォルニア州太平洋沿岸では2年連続減少し、限界を示す3万未満となった。これは環境保護団体ゼロス・ソサイアティにより200人近い習熟したボランティアがカウントした結果で、この冬の個体数は2万9418だった。これ以上減少すると、下降スパイラルに陥る危険性が強まるとして、研究者は農家に対して農薬の使用を控えることを求めた。〔Mongabay 2020/2/26〕

●広がるジカンバ訴訟

 ミズーリ州のジカンバ訴訟で被害者が勝訴、バイエル社とBASF社に対して2億6500万ドルの支払いを命じる判決が出されて(本誌2020年3月号参照)以降、複数の州で多くの農民が訴訟に踏み切ることが明らかになった。すでに先の判決が出された地方裁判所には、100人を超える農民が訴訟に加わっている。〔US Right to Know 2020/2/26〕

●アジア事情
●バングラデシュで厳密なGM食品表示実現へ

 バングラデシュ食品安全局(BFSA)代表のManbub Kabirは、南アジア・バイオセーフティ計画とともに国際戦略研究所において開催された、GM食品に関するワークショップで、GM食品表示の義務化を目指していると述べた。現在バングラデシュでは法的にはGM食品表示が義務づけられているが、市場では無視され、表示を見ることはない。同国で栽培されているGMナスも、消費者にはどれがGMナスか知ることはできない。輸入作物への港での検査もなされていない。そのため同代表は、規制と検査体制の強化が必要だと述べた。〔The Daily Star 2020/2/26〕

●ゲノム編集
●ゲノム編集における新たな問題

 ゲノム編集について、各国では3つのパターンに分けて規制の検討をしている。DNAを切断するSDN-1(タイプ1)、切断と同時に短いDNAを挿入するSDN-2(タイプ2)、切断と同時に遺伝子として働く長いDNAを挿入するSDN-3(タイプ3)である。そのうち、これまでほとんど研究されてこなかったSDN-2について、新たな問題が示された。このタイプは、日本では環境省は規制、厚労省は規制しないことを決めている。ドイツのフォルシュングス・ゲマインシャフトから支援を受けたボリス・V・スクリャビンらの研究チームは、6つの異なるノックアウトマウスを作成して解析した。その結果、短いDNAがゲノムのさまざまな箇所に入り込んでいることがわかった。また、さまざまな箇所に入り込んだ短いDNAは、従来のPCR法による解析では見つからない、と指摘している。〔Science Advances 2020/2/20〕

●ゲノム編集のオフターゲットを過少評価してはならない

 バイオサイエンス・リソース・プロジェクトの科学者ジョナサン・レイサムは、ゲノム編集がもたらす問題のうち、大きな影響を及ぼすオフターゲットについて、あまりにも過小評価している、と指摘した。通常のオフターゲットの評価では見落とされてしまうが、小さな変異がさまざまな箇所で生じている。原因は、ゲノム編集で使用されるCRISPR-Cas9は、切断酵素を用いるだけで修復酵素を使用しないためだという。そのため切断後の接合が偶然に左右され、このような現象が起きてしまう。そのうえで、結果が思わしくない場合でも廃棄できない動物や人間には応用すべきではない、と指摘した。〔Independent Science News 2020/2/25〕