■2020年4号

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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
●GM作物の野生化に警告

 ドイツの科学者団体テストバイオテクのアンドレアス・バウアー・パンスクスらが、GM作物が野生化した際に起きるリスク評価と提言を発表した。カナダ、オーストラリア、米国のGMナタネ、米国のGMカメリア、アジアのGM稲、アフリカのGMササゲが対象である。GM作物は種子のこぼれ落ちなどによって制御不能に陥る危険性があり、交雑を起こすと、より多くの花粉や種子を作り出したり、ストレス耐性に変化を与えたりといった、生物学的特性に変化をもたらす可能性がある。そのため、線引きするための「カットオフ基準(病態識別値)」を導入する必要がある、と指摘した。〔Environmental Sciences Europe 2020/volume32〕

●除草剤
●グリホサートなどの発癌性農薬による小児白血病への影響

 妊娠中の女性がグリホサートなど発癌性のある農薬に暴露すると、生まれてくる子どもが白血病になる確率が高くなるという論文が発表された。グリホサートなどの農薬65種類のうち、特に影響があったのは尿素系農薬で、発症した白血病の種類は小児リンパ性白血病と急性骨髄性白血病であった。1998年から2011年までのカリフォルニア州の公的記録や農薬使用報告書、土地利用データを組み合わせて、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアンドリュー・S・パークらが解析した。〔International Journal of Hygiene and Environmental Health 2020/3/vol.226〕

●グリホサートがもたらす癌の種類

 米国アトランタのエイモリー大学教授クリストファー・ポルティエは、グリホサートを用いた21の動物実験を分析し、そのうち再評価に値する13の論文で示された癌の種類について評価した。その結果、癌の種類は37あり、特に多かったのは、雄のマウス(CD-1)の場合、血管肉腫、腎臓腫瘍、悪性リンパ腫。雌のマウス(CD-1)の場合、血管肉腫、悪性リンパ腫。雌のマウス(スイス系アルビノマウス)の場合、血管腫、腎臓腺腫、肝臓腺腫、皮膚角化腺腫、皮膚基底細胞。雄のラット(Sprague-Dawley)の場合、細胞腫瘍。雌のラット(Sprague-Dawley)の場合、副腎皮質癌。雄のラット(Wistar)の場合、肝細胞腺腫、皮膚角化腫であった。〔Environmental Health 2020/2/12〕

●グリホサートが淡水系の生物に影響を及ぼしている

 GM作物の登場により盛んに使われている除草剤ラウンドアップが周囲に流れ出て、水系を汚染している。この除草剤の主成分であるグリホサートが淡水系の生物多様性にどのような影響があるのか、カナダ・モントリオールにあるマッギル大学V・フージェールらの研究チームが実験を行ない、池の植物プランクトンへの影響を評価した。実験の結果、ごく一部の植物プランクトンは耐性を持ち生き残ったが、大半はいなくなった。このままでは生物多様性を奪い、植物プランクトンがもつ温暖化対策の役割を殺ぎ、気候変動に影響を与えることになる、と研究者は指摘している。〔Nature Ecology & Evolution 2020/3/2〕

●グリホサートのペットへの影響

 最近、犬や猫、牛などの家畜にリンパ腫がよく見られるようになった。原因として考えられるのが、グリホサートと思われる。タフツ大学カミングス獣医学部により2012年、除草剤が使われる芝生で遊ぶ犬は、リンパ腫になる割合が70%上昇するという研究結果が「The National Center for Biotechnology」(2012年1月号)で発表された。論文では農薬の種類は特定されていないが、最近の研究からGM作物飼料の使用量の増加と家畜のリンパ腫の増加が一致していることから、グリホサートが最も有力視されている。飼い主は、除草剤の散布地域から動物たちを遠ざけ、食事に気をつける必要がある。〔GMO Science 2020/3/4〕

●EUの長期動物実験で、ラウンドアップ影響せずと結論


 2019年10月、2年間にわたりラットにGMトウモロコシ「NK603」を与えた、EUの公的プロジェクトによる動物実験「G-Tw YST」は、ラウンドアップ散布の有無に関係なく、GMトウモロコシによる影響はなかった、と結論付けた。この実験は、2012年発表の仏カーン大学教授ジル=エリック・セラリーニの実験を批判するのが目的で行われた。通常モンサント社などは実験用ラットにSprague-Dawley系統を使い、セラリーニもこの系統を用いている。しかし今回の実験では、通常の発癌実験では使用されない、癌になりにくいラットWistarを用いており、GMトウモロコシの影響を見るにはふさわしくない、と欧州の市民団体もセラリーニ自身も批判している。セラリーニはこの論文を分析し、ラウンドアップを散布したGMトウモロコシを与えた集団の雄ラットは、対照群に比べて死亡率が高く、最も多い原因は下垂体腫瘍で、続いて腎臓病だった。雌ラットの腫瘍では、乳腺に次いで多かったのが下垂体だった点が注目される、と指摘した。〔Environmental Sciences Europe 2020/volume32〕

●省庁動向
●種苗法改正へ

 3月3日、種苗法改正案が閣議決定され、来年4月1日施行を目指して国会での審議が始まった。改正の目的は、作物などの新品種開発に伴う知的所有権の強化と、農家の自家採種の制限拡大である。種苗法は植物新品種保護国際条約(UPOV)の国内法に当たり、開発者の権利を保護する法律である。今回の法改正は、日本で開発された果実の優良品種が海外に流失した例があることから、その規制を主目的としている。しかし、これまでほとんどの作物を自由に自家採種できた農家が、これからは登録品種に関しては権利保有者の許諾や高額の権利料が必要となり、これに反した場合、高額の罰金などの刑が科せられることになる。