■2020年6月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る

























バイオジャーナル

今月の潮流●種苗法改正案の審議始まる

4月16日、「種苗法改正案(種苗法の一部を改正する法律案)」が衆議院農水委員会にかけられた。この改正案の焦点は、従来、登録品種の一部に限られていた自家増殖・自家採種禁止を、全植物種にまで拡大することにある。禁止作物はこの間急速に増加し、2016年に82種類だったものが、翌年から増え始め、19年には387種類になった。このように自家増殖・自家採種禁止植物種は年々増え続けてきたが、今回の法改正では例外なく網をかぶせ、罰則も強化する。

法改正のきっかけは、種子開発の中心に位置するようになった遺伝子組み換え作物の、その知的財産権の保護の強化を主目的に1991年にUPOV条約(植物新品種保護条約)が改正されたことに始まる。知財保護の強化は、モンサント社など多国籍種子開発企業の利益をもたらすものである。UPOV条約改正を受けて日本では、98年に同条約の国内法である種苗法を改正したが、自家増殖を禁止した作物はごく一部だった。今回の種苗法改正は、ゲノム編集技術という新たな種子支配の技術の登場に合わせたタイミングで出された。さらに重要になった知財保護の強化を目的に、自家増殖禁止を全作物に拡大したのである。本格的論戦を5月中に開始し、政府は今国会での成立を目指していたが、次の国会へ先送りされた。新型コロナウイルス感染症拡大のどさくさにまぎれて、このような重大な事態をもたらす法改正を行おうとする政府の姿勢に批判が強まっている。