■2020年6号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●タイで3農薬の規制6月施行

 タイの国家有害物質委員会は4月30日、懸案だった3農薬の規制に関して、再延期を認めず、6月1日より実施することを決定した。これによりパラコートとクロルピリホスは使用禁止、グリホサートは使用が制限される。決定までには紆余曲折があった。昨年10月に同委員会が3農薬の禁止をいったん決定したが、翌月、産業大臣によって撤回された。この撤回に関しては米国の圧力があったと考えられている。その結果、パラコートとクロルピリホスの使用禁止は12月1日開始予定が2020年6月1日に延期となり、グリホサートは禁止から使用制限となった。〔Bangkok post 2020/5/1〕

●GM昆虫
●米国でGM蚊放出試験承認へ

 米国環境保護庁(EPA)が、フロリダ州とテキサス州で予定されているGM蚊の放出試験を承認しようとしている。この試験は、実際にGM蚊を放出して病気の広がりを防ぐことができるかどうかを見るもの。対象は、ジカ熱、黄熱病、デング熱を媒介するネッタイシマカで、GM蚊が野生の蚊と交雑しても雄しか生まれないように遺伝子を組み換えた。承認されると、フロリダ州ではモンロー郡で今夏、テキサス州ではハリス郡で来年放出試験を行う。ハリス郡には大都市のヒューストンが含まれる。〔Bloomberg Law 2020/5/1〕

●ゲノム編集
●遺伝子ドライブ技術への警告

 独ブレーメン大学、独ヴェヒタ大学、オーストリア・ウィーンの自然資源・生命科学大学、そして独テストバイオテクが共同で進めてきた、遺伝子ドライブ技術の影響を予測する「GeneTip研究プロジェクト」の研究結果がまとまった。それによると、この技術は、領域内の標的生物を抑制または根絶を目的に使用するが、いったん開始されると制御が効かず、後の世代に意図しない問題が発生する可能性がある、という。現在、欧州食品安全庁(EFSA)に、アフリカでこの技術を使ったマラリア蚊を減らす提案に向けた専門家による論文が提出されているが、同プロジェクトは、その論文のリスク評価に問題があり、放出結果は当初の予測と大きく異なる可能性がある、と指摘している。というのも、信頼するに値する予測の方法がない、としている。そのうえで、遺伝子ドライブ技術を用いる場合、予防原則に基づき、次の3つの基準を加えるべきだと結論付けた。@ターゲットとなる生物、例えば蚊に関する生物学的評価。A環境(生物も非生物も含めた)との相互作用、B遺伝子操作された生物の意図された生物学的特性、である。〔Integr Environ Assess Manag 2020/4/6〕

●新型コロナウイルス
●新型コロナウイルスのバイオハザード説

 新形コロナウイルスが遺伝子組み換えされたものかどうかをめぐって議論が続いている。ニューヨーク医科大学の細胞生物学者で解剖学者でもあるスチュアート・ニューマンは、改めて新型コロナウイルスが遺伝子操作された可能性があることを指摘した。これまで遺伝子操作説を否定した最も有力な論文に、ミシガン大学医学部のクリスチャン・アンダーセンらによって書かれた論文があるが、スチュアート・ニューマンはこの論文について、「以前に同定されたコロナウイルスと比較したもので説得力がない」と指摘した。分子生物学者のマイケル・アントニオもまた、遺伝子操作を否定する説に疑問を投げかけている。ただしマイケル・アントニオもスチュアート・ニューマンも、遺伝子組み換えが行われた可能性が高いが、生物兵器が目的とは思えないと述べている。感染力を強化する研究は、ワクチン開発や治療法開発に向けて世界中で行われている、と指摘している。〔Independent Science News 2020/5/5ほか〕