■2020年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●米国裁判所がジカンバ承認を取り消す

 環境保護庁(EPA)に除草剤ジカンバの認可見直しを迫っていた米国の第9巡回裁判所は6月3日、3人の裁判官の一致した判断により、認可を取り消す判決を下した。理由としては、EPAがジカンバによる被害を過少評価していたため、としている。ジカンバは2017年から昨年にかけて農家に大きな被害をもたらしたため、今年の被害を事前に防ぐことを目的の1つとして、食品安全センターなど農民・市民4団体が提訴していた。しかしEPAはこの判決を批判し、農家が在庫として抱えているジカンバの使用を7月末まで認めた。そのため4団体は6月8日、EPAのやり方を批判し、今年もまた被害が繰り返されてしまう、と非難する声明を発表した。
バイエル社は6月16日、米国ルイジアナ州ルーリングにある新しいジカンバ製造工場の操業を中止すると発表した。同社は、過剰生産となり新規投資の魅力がない、とその理由を述べ、今回の判決とは無関係であることを強調している。〔Reuters 2020/6/16ほか〕

●米国農務省がGMO規制撤廃の規則「SECURE」を発表

 5月に米国農務省はGMO規制撤廃を打ち出し、開発者はGM作物やゲノム編集作物に関して通知する必要がなくなった。この新たなルールは、「SECURE(Sustainable, Ecological, Consistent, Uniform, Responsible, Efficient:持続可能で、生態学的に一貫した、均一で、責任ある、効率的な)」規則と呼ばれ、来年11月に施行される。農務省でGMO規制を担ってきたのは動植物衛生検査局(APHIS)で、遺伝子組み換え作物に用いられる、植物に病気を引き起こすアグロバクテリウムの監視等を長期にわたって行なっていた。今後は従来のように開発方法ではなく、開発された作物の特性に沿ってGMOを評価することになった。SECURE規則の目的は規制緩和であり、GMO及びゲノム編集技術による作物への監視が行き届かなくなるおそれがある。〔The Conversation 2020/6/1〕

●ラウンドアップ訴訟、バイエル社が和解金額を提示

 除草剤ラウンドアップの集団訴訟に対してバイエル社は、これ以上訴訟が拡大しないよう100億ドルを支払うと、被害者と口頭での合意に達し、間もなく正式合意する。ラウンドアップ被害者による訴訟は、推定12万5000件に達すると見られるが、同社はその多くを認めていないため実態は明らかになっていない。合意により、同社が経営危機を乗り越えられるかどうかは不明である。〔The Independent 2020/5/26〕


●欧州事情
●英国はゲノム編集規制を解除か

 EUを離脱した英国政府は、国会に農業法改正案を提出した。成立すると環境保護法の改正が可能になり、生物多様性条約の国内法であるEUのカルタヘナ法の規制から外れることになる。欧州司法裁判所の判決によって、EUではゲノム編集技術にもGMOと同様の規制を求めることになっているが、それに拘束されないことになり、規制しない可能性が強まっている。〔Farming UK.com 2020/5/24〕
この動きを受けて英国では、ゲノム編集作物の実用化に向けた動きが活発になっている。ケンブリッジ大学教授のデビッド・バウルコンブ(David Baulcombe)によると、実用化が早まりそうなのは、グルテンフリーの小麦、耐病性のテンサイやジャガイモだという。〔The Guardian 2020/6/14〕

●欧州の消費者、GMOと農薬は望まない

 欧州消費者団体The European Consumer Organization(BEUC)が、「持続可能な食品」についてアンケート調査をした。持続可能な食品は大事と答えた人は57%、持続可能な食品のイメージは、環境への影響が少ないが48.6%だった。次いで、GMOと農薬を使用していないが42.6%、地産地消は34.4%。また、環境への負荷が大きな肉類を控え、大豆などの植物由来のタンパク源に変えてもいいと答えた人は36.5%で、その原料がGMOでも受け入れる人は13.6%だった。回答者の68.7%は、肉類を植物に変えた場合、GMOを含む植物の代替品は望まないと答えている。〔BEUC 2020/6〕

●コロナ禍で支援を受ける英国のGMO企業

 英国のコロナウイルス支援金を、GMO企業をはじめとする大企業が受け取っている。イングランド銀行によると、これまで53社が162.5億ポンド(2兆1125億円)の支援を受けた。最大がGMO企業で、英国に8つの工場を持つBASF社は実に10億ポンド(1300億円)を、バイエル社は6億ポンド(780億円)を受け取った。両社は数十億ドルの配当金を株主に配当すると発表して数週間後に受け取っている。〔Unearthed 2020/6/4〕