■2020年9月号

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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●ラウンドアップ訴訟、控訴審もバイエル敗訴

 7月20日、米国カリフォルニア州第一上訴地区の控訴裁判所は、除草剤ラウンドアップ被害者の控訴審で、バイエル社の責任を認める判決を下した。ドウェイン・ジョンソンさんがラウンドアップを使用したために非ホジキンリンパ腫になったと訴えたこの裁判は、2018年8月10日サンフランシスコ地裁により、原因はラウンドアップによるものだという被害者の訴えが認められ、バイエル社に賠償金の支払い命令が下った。バイエル社は控訴したが、控訴裁判所は大幅に減額したものの2050万ドル(約22億円)を支払うよう命じた。賠償金の半額は懲罰的賠償金である。〔US Right to Know 2020/7/20〕

●ジカンバ承認取り消しで再審理を申し立てる

 除草剤ジカンバの承認取り消しを命じた判決(本誌2020年7月号参照)で、ジカンバの登録を無効にされたBASF社とコルテバ・アグリサイエンス社は、この決定に異議を訴え、7月20日同裁判所での再審理を申し立てた。〔DTN Progressive Farmer 2020/7/20〕

●除草剤エンリスト・デュオの登録取り消し訴訟却下

 米米国第9巡回裁判所は7月22日、コルテバ・アグリサイエンス社が開発した除草剤「エンリスト・デュオ」の登録取り消しを求めた訴えを却下した。2017年に生物多様性センター、全米家族農業者連合、食品安全センター、農薬行動ネットワークなどの市民団体が提訴した。エンリスト・デュオは、除草剤2,4-Dとグリホサートを混ぜ、しかも表示にはないさまざまな有害な成分が加えられ、除草剤耐性作物に使用するために開発された。市民団体は、この除草剤がオオカバマダラなど貴重な生物種を絶滅させる可能性が強いと訴えている。〔DTN Progressive Farmer 2020/7/22〕

●人工肉を取り巻く食料問題

 米国大統領選挙でトランスヒューマニスト党から立候補に名乗りを上げた人物が、培養肉の推進を政策に掲げ、自分の皮膚から得られた細胞を培養して作った肉を食べたことで、にわかに人工肉とそれを取り巻く食料問題が注目されている。彼が開発を進める「ペンザイオンバーガー」は、「生態系の危機の解決のため」に自らが設立したQuixotic Life Science社により作られた人間の細胞を用いた肉である。このケースはかなり異常にしても、牛や豚などの食用部分を細胞培養して作る培養肉が脚光を浴びている。バイオ技術を用いて工場で生産され、食用動物の肥育を行わなくてすむことから、将来の食料問題の解決につながるとしている。2013年3月、オランダの研究チームによって開発された培養肉から作られたビーフバーガーが、ロンドンでデモンストレーションとして登場して以来、カリフォルニア州にあるベンチャー企業メンフィス・ミート社などによって開発が進められてきたが、高価格であることから市場化は進んでこなかった。日本でも2019年にJAXA(日本宇宙航空研究開発機構)が、培養を含む食料を宇宙で生産し消費する計画を立て、企業、大学、研究機関が参加して開発に取り組むことになった。
そのほかにも、米国スタンフォード大学の研究者によって設立されたインポッシブル・フーズ社が2016年に開発したインポッシブル・バーガーが、米国・香港の1000以上のレストランで提供するまでに拡大している。インポッシブル・バーガーは、GM大豆を用いて大豆ハンバーグを作り、そこに肉らしさを加えるために酵母によって生産された鉄含有血液色素のヘム分子を注入している。このヘム分子が同社の有力な特許になっている。インポッシブル・フーズ社は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの支援を受けている。いずれの製品も、食料問題を解決し、環境に優しく、アニマルウェルフェアにもなることを売り物にしている。〔GM Watch 2020/7/27ほか〕